世界経済評論IMPACT(世界経済評論インパクト)

No.810

ミャンマーに導入された日本電子通関システム

川島 哲

(金沢星稜大学経済学部 教授)

2017.03.13

 2014年10月にNTTデータがミャンマー政府からシステム開発を受注し,約2年間の開発・準備期間を経て,当初計画どおりのスケジュールで日本の電子通関システムであるナックス(NACCS:Nippon Automated Cargo and Port Consolidated System)をベースとした新たな通関システム,マックス(MACCS:Myanmar Automated Cargo Clearance System)の総合運転試験が2016年8月から10月にかけて実施された。

 そして,2016年11月12日にミャンマーで供用開始したマックスの運用が開始された。システムの導入や税関でのキャパシティービルディング(能力構築)に関しては,国際協力機構(JICA)が無償資金協力や専門家派遣を通じて全面的な支援を行ってきた。マックスの導入によって変わる点は,自動審査処理と申告納税制度の導入である。グリーンチャンネル(貨物全体の約6割)の場合は,あらかじめ税関に預け金を登録していれば,自動で税金引き落としが行われるため,申告から許可まで数秒で完了する(日本貿易振興機構「世界のビジネスニュース(通商弘報)」2016年11月30日,2017年3月7日アクセス)

 ではこれによりいかなる今後への期待がもてるのか。

 まず大きな効果として,このような通関システムは,今まで大きな問題であった国境を越える際の通関システムの遅滞性を補い,今後大きく変化していくASEANシングルウィンドウ(ASW)へ向けての支援及びシステムの構築が望まれていたなかで今後大きく変わっていく可能性があり期待を込めてみていくことが必要となる。貨物などの到着時の審査も円滑化し,申請手続きも電子化していく。

 第二に,賄賂等の横行を根絶するひとつになる。それは今後,さらなる外資の誘致においては大変重要となる。また,そのシステムを運用できるような人材づくり,そしてそのための制度づくりが望まれる。

 第三に,インドシナ諸国には中国からのインフラ面での援助が多く行われている。そしてそれらは計画通り進まずその遅滞が大きな問題となっている現状がある。これへのアンチテーゼとして日本からのインフラ援助が今後大きくクローズアップされてくる。というのは,中国からのインフラ援助より日本からのインフラ援助の有効性という色彩が色濃くなってくるからにほかないからである。

 今後のインドシナ諸国が中国への傾斜から日本への傾斜へと向かうひとつの契機となるのがこの通関システムの導入にみられるのではないか。日本は,インドシナ諸国をはじめアジアの多くのインフラ援助を行うことにより,30年前にマレーシアでさけばれたルックイーストの再来,「インフラにおいては日本」という日本の存在感を再認識させることにもなるのではないかと思われる。

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