世界経済評論IMPACT(世界経済評論インパクト)

No.788

先行き不透明の今後の世界

津守 滋

(東洋英和女学院大学 名誉教授)

2017.01.30

 年末から年始にかけて,話題をさらったのは,トランプ政権の発足によりアメリカや世界がどのように変わるのかとの論調であった。答えは一様に,良くもなれば,悪くもなるとの不透明感である。株価が2万円代に上昇するとの強気の見方もあれば,やがては「トランプ効果」がはげ落ちて,反転するとの弱気の予想も多かった。以上は短期的な予想で,答えはすぐに出てくる。

 ここで問題にしたいのは,より長期的な動向である。ここでは朝日新聞に載った3つの論文をとりあげる。一つは世界システム論のI.ウォーラスティン(11月11日),次にドイツの社会学者W.シュトレーク(11月22日),3番目に藤原帰一の「時事小言」(10月19日)である。これらいずれもグローバリズムの行き詰まりを予言し,世界の資本主義システムが「構造的危機の時代を迎える」として,先行き悲観的ないし懐疑的である。

 ウォーラステインは,「現行のシステムは,今後も長期にわたって続けることはできず,まったく新しいシステムに変わる分岐点にいる」とする。それがどのようなシステムかは「私には知るよしもない」と突き放す。他方シュトレークは,「金融緩和が行き詰った後に危機を先送りする手段は見当たらない」とし,「解決策はない」と断言する。最後に藤原帰一は,トランプはともかくとして,「グローバリズムに反対する声は残る。経済停滞の下で,左派と右派を横断する反グローバリズムが広がり,それが経済の停滞を拡大する。そのような悪循環がはじまっている」と診断し,この悪循環から脱出する処方箋を提示しない。

 このようなお先真っ暗な状況の中で,とりあえずの長期的見通しではないものの,当面の方策として先般のペルーでのAPECの閣僚会議では,「貿易及び開かれた市場の恩恵がより効果的に幅広く一般の人に伝えられることが必要」と指摘,次のような領域での格差解消の「実行」が強調されている。教育,女性,健康と福祉,失業,中小零細企業,都市と農村,環境と気候変動。これら個別の問題について,格差解消の取り組みを積み重ねていく以外,当面妙案はないのかもしれない。

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