世界経済評論IMPACT(世界経済評論インパクト)

No.728

日本の国のかたち(その3)

三輪晴治

((株)ベイサンド・ジャパン 代表取締役)

2016.10.03

 更に極めつけは,1975年に「証券取引所法」(1934年制定)の改正で,第11A条を追加したことである。「証券市場を維持保護し,強化して国家の重要な資産とする」と述べられているが,これの本当の意味はこうである。つまり目的を達成するには,これまで創りあげたアメリカ経済のエンジンの「制御システム」,特に「ペコラ委員会レポートの制御システム」ではやりづらく,もっと制御の枠,グリップを緩めようというものであった。つまり,これまでの制御システムの「ディレギュレ―ション」(制御の規制を取り除く)である。具体的には,「有価証券の範囲」を拡大したことである。これにより,これまで禁じていた詐欺的なものを入れても良いということになった。アメリカのこうした金融商品を買ったものは損をする。つまりアメリカが得をするのだ。

 金融商品の売買には必ず玄人と素人がおり,その情報の少ない素人のために十分な情報を開示しなければならないとされていたが,その情報をあまり開示しなくても良い,つまり素人のことは考えなくても良いとした。これで素人から富をやすやすと収奪するようになったのである。これをアメリカは「域外適用」と言い,世界でこれを振り回そうと言うことで,実際に実行した。こうしてアメリカは1995年ころから,狙った通り,世界の富を収奪してきた。1981年に大統領に就任したレーガンが,それを具体的に推し進めた実行者であった。レーガンは詐欺的な証券も含めたヘッジファンドを許可し,世界の富の収奪を野放しにしてしまった。しかし1975年以降のグローバリゼーションで,金融資本をもとにN乗倍の拡大を追い求めた企業,多国籍企業,無国籍企業は今や壁にぶち当たっている。

 同時にアメリカは,容赦ないやり方で日本に逆襲を仕掛けてきた。いろいろの「貿易摩擦」を仕掛け,日本の自動車産業,半導体産業を骨抜きにしようとした。日本の自動車産業はアメリカに工場を移すことで,何とか生き延びているが,日本の自動車会社で働く労働者は当然ながら減りこそすれ増えない。日本の半導体産業は,一時世界のトップになっていたが,アメリカにより政治力を含めて徹底的に解体されてしまった。

 こうして「パウエル・メモ」は大変な功を奏し,日本産業,日本経済は見事にやられて,2008年以降,日本のGDPは伸びず,デフレが続き,世界で一人負けが続いている。

 アメリカも,これまで日本がおかしくなるとは考えていなかったようだが,しかし,アメリカには,思ってもいなかった「大誤算」があった。それは「パウエル・メモは,アメリカ自国の国民大衆,アメリカ経済そのものをも破壊してしまった」ということである。つまりこれによりアメリカの産業力は衰退し,今日の「所得の大格差」が生まれ,中間層が疲弊し,長期経済停滞に陥ってしまったのだ。これがトランプ現象として現れているのだ。(つづきは,その4へ)

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