世界経済評論IMPACT(世界経済評論インパクト)
世界平和を目指し日本流アプローチを:ポケモン,ハローキティ,アンパンマンが躍動する
(国際貿易投資研究所 顧問)
2025.12.15
世界知財収益トップ10に君臨するジャパン・キャラクター
ポケモンは世界一の金持ちだ。ハローキティは2番目。アンパンマンも6番,マリオ,少年ジャンプ・ジャンプコミックスが8,9番目。低迷する日本経済をよそに,ジャパン・キャラクター達は元気いっぱいだ。
米国のTitleMax社が発表した24年末世界キャラクターの知財ライセンス累計収益番付けは衝撃的だ。ベストテン入りしたジャパン・キャラクターの合計収益は,くまのプーさん,ミッキーマウスとなかまたち,スターウォーズ,ディズニープリンセスを擁する米国を462.5億ドル上回る約3026億ドルと圧倒した。
ポケモンは921億2100万ドル(24年平均TTBベースで13兆8716億円),ハローキティは800億2600万ドル(同12兆503億円),アンパンマンは602億8500万ドル(同9兆777億円)を稼いだ。
この額はゲーム,アニメ,映画,グッズ販売など複数媒体によるメディアミックス収益合計額である。例えばポケモンは各分野の関連企業による販売と収益を合算したもので,「株式会社ポケモン」1社の収益ではない。ちなみにポケモンのメディアミックス戦略は,ゲーム,アニメ,映画,カードゲーム,ライセンス事業など多岐に亘っている。TVアニメは192カ国・地域で放映され,カードゲームは累計529億枚以上発行され,14言語に訳されて89の国・地域で販売されている。かつて宝探しスタイルを横行させたポケモンゴーはスマホゲームの一環だった。
ハローキティ,アンパンマンの戦略も大同小異,内外にメディアミックス戦略を積極的に推し進めている。
TitleMax社はポケモンの年平均収益を40億ドル(6023億円)と推定している。仮に海外展開を30年として計算すると,ハローキティ26.7億ドル(4016億円),アンパンマン20億ドル(3030億円)の収益を毎年上げている勘定になる。
これら3キャラクターの合計年間収益は約1兆3000億円に上る。アンパンマンの海外展開は2000年代から本格的になったので,実際はこの額を上回ると見てよい。
1兆3000億円とは一体どれほどのものか。
25年3月決算でみた企業の営業利益ランキングで検証すると,3位ソニーGの1.4兆円に迫り,1兆円弱のソフトバンク,日立はおろか,1.1~1.27兆円のKDDI,ホンダ,INPEXを上回る額になっている。これら大手の3キャラに加えて8〜9位のマリオ,少年ジャンプ・ジャンプコミックスを数えれば,年間収益は優に営業利益3位に匹敵しよう。ジャパン・キャラクターの経済力恐るべしである。
今年のインバウンドは4000万人超と見込まれる。彼らのお目当ては一に和食,二にアニメ・マンガだ。デフリンピックに参加した某外国人選手は「ONE PIECE」の登場人物が人生の支えだったとTVで語っていた。日本のアニメを見て日本語を学び始めた外国人は少なくない。アニメ・マンガの舞台となった各地は,外国人巡礼者が押し寄せる聖地となった。インバウンド外国人の多くは,心躍らせたアニメ・マンガを生んだ現場を体験しようと,ワクワクしながら日本に降り立つ。
内閣府クールジャパンの知的財産推進計画では,国内外のコンテンツ産業の市場規模は国内13.3兆円,海外5.8兆円で,半導体産業より大きい基幹産業と位置づけている。世界市場は2019~23年間で26.1%拡大,日本の海外展開も22~23年には15%増を記録した。今後,2033年までに日本発のコンテンツ海外市場規模を20兆円に拡大する計画だ。これに沿って日本フアンの割合を現在の全世界の国・地域平均の56.2%から2033年までに10ポイント増やし,アニメ・マンガの聖地も200カ所の拠点を選定する計画だ。
ポケモン,アンパンマン達が提唱する世界市民平和会議
日本のアニメ・マンガが国境を越えて人を惹きつけてやまないのはなぜか。
プロットの見事さや優れた描画技術も然ることながら,多くのアニメ・マンガで展開される人間の心根に触れる優しさ,愛,信念,道義を貫く愚直なまでの生き方,夢・理想に向かって葛藤し,艱難辛苦に耐えて命がけの冒険に挑む不屈の精神力などが心を捉えるのだろう。
現実の世界はこれらの価値観から益々遠ざかり,真逆の方向に突き進んでいる。
金本主義化した資本主義は弱者に容赦なく,政治は金本主義に取り込まれつつある。節を曲げなければ職場や社会で生き難く,「真っ当な生き方」は憂き目をみる。汗を流して糧を得る尊さの影は薄くなり,抜け目ない投機・投資で多額を稼ぐ人が囃される。
世情は不安,不満,非寛容,猜疑,欺瞞が横行し油断ならなくなった。世界は恫喝,敵意の扇動,対立・分断。それらの極みとしての侵略,殺戮,破壊など、人間性を圧し潰す苛酷でやりきれない光景を呈している。
それだけに,人は日本のアニメ・マンガが人間本来の価値や尊さ,無限の奥深さを底流に奏でる世界に傾倒するのである。
そうした内外のアニメ・マンガ愛好者は,日本への期待を更に膨らませている。
他ならぬ日本にこそ執ってもらいたいイニシアティヴ。それはアニメ・マンガの世界が描く平和への率先であろう。
世界中の「穏やかなくらしを!」の声が共振すれば,増幅された波動は政治の非力を補う新たな次元のエネルギーを生むに違いない。
世界に向かって呼びかけるのは,日本のアニメ・マンガの主人公(キャラクター),ポケモンやアンパンマン達である。国際政治の舞台がG20ならば,世界市民の平和会議はさしずめC(Character)10だ。TitleMax社キャラクター収益(=愛好者数とすれば)ランキングトップ10がメンバー資格を得る。日本以外にランク入りするのは,くまのプーさん,ミッキーマウスとなかまたち,スターウォーズ,ディズニープリンセス,ハリーポッターなどだ。
円卓を挟んでこれらの主役達が思い思いに平和への道と,今みんなでできることを語り合い,実行を呼びかけるという動画中継は,広く世界にアッピールするだろう。
呼びかけに応える賛同者は,国境を越えた世界平和大使なり,そのピンバッジは無条件で友好を育む徴となろう。平和を叫ぶ輪が世界に広がる。
日本が軍事力で戸締まりをしっかりするだけでは,平和国家としての世界貢献度は限られる。世界の市民の心を動かし,胸中に平和への熱い思いを沸騰させる長期的な理念の確立,実行への勇気ある一歩が必要だ。市民の圧倒的応援がその一歩を後押ししている。
幸いヴァーチャルとリアルの垣根が低くなった昨今,世界平和に向けたジャパン・キャラクター達の呼びかけは決して夢物語に終わらないと信じたい。
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