世界経済評論IMPACT(世界経済評論インパクト)
次の世界大恐慌はいつ起こるのか?:AIバブル崩壊と「Deep State」の影
(アトモセンス・ジャパン社 社長)
2025.11.17
本稿は,現在の人工知能(AI)バブルが次なる世界大恐慌を引き起こす蓋然性,その背景にあるとされる国際金融資本家(Deep State)の暗躍,および長期間にわたる日本経済の衰退構造について考察するものである。結論として,AIバブルの崩壊は避けられず,そのトリガーは投機家の操作または地政学的リスクにより引かれる可能性が高いと指摘する。
AIバブルの過熱と株高の構造的要因
日本の株式市場は,過去30年間にわたり実質GDPが停滞しているにもかかわらず,日経平均株価が2025年10月に一時5万円台に達するなど,異常な高騰を続けている現状にある。この株高は,アベノミクスに端を発する異次元の金融緩和と日本銀行による大規模な株式購入に支えられている。しかしながら,この株高の主要な受益者は,日本の実体経済ではなく,主にウォール街の国際金融資本家(Deep State)であると認識すべきである。現在,株価上昇を牽引してきたAI関連銘柄には過熱感が顕著であり,2025年11月における日米の株式市場では,半導体大手のNVIDIAを中心にハイテク株の下落が継続している。この現象は,AI分野への過剰な期待と投資がもたらすバブル崩壊の予兆であるといえよう。
米国経済の金融・財政不安とバブルの拡大
近年の米国におけるシリコンバレー銀行,シグネチャー銀行,および欧州のクレディ・スイスといった大手金融機関の破綻に対し,当局は預金全額保護や他行による買収という迅速な対応を実施した。これは一時的な危機回避策であったが,同時に「大きすぎて潰せない(Too big to fail)」というモラルハザードを内包した問題構造を再び顕在化させたのである。
米政府の「ジーニアス法」に基づき発行が急増しているステーブル・コインは,市場価値の低い米国債などを裏付け資産としながら,高価値に見せかけるための仕組みである。これは実態価値との乖離を拡大させるバブル構造を形成しており,将来的に崩壊する危険性を孕んでいる。さらに,米政府の負債は37兆ドルに達し,その利払い負担は年間1.3兆ドルに上るなど,財政破綻に近づいている状況にある。政府が金の再評価益による負債帳消しを企図していることは,この切迫した財政状況の裏付けである。
一方トランプ大統領が掲げた「反グローバル化」と「アメリカの製造業復活」を目的とした関税戦争は,世界のサプライチェーンを寸断し,GMやフォードといった国内自動車産業および小売業に甚大な悪影響を及ぼした。その結果は,意図した製造業の回帰ではなく,経済の停滞という逆効果を招来している。
ヘッジファンドが開発・拡大させてきた「相対価値取引(アービトラージ)」などの金融商品も,実体経済とは無関係の架空の数字遊びであり,一般市民の富を収奪するための「詐欺的金融商品」といえよう。これら虚構の金融商品は,次なる大恐慌においてその価値を消失させることが確実である。
資本主義経済活動の本質と恐慌のメカニズム
資本主義経済は,「資金」「モノ」「労働」の三要素が循環し,イノベーションを通じて発展する。しかし,企業家の予期せぬ失敗は過剰在庫・不良在庫を生み出し,最終的に「不良債権」という「膿」として経済システム内に蓄積される。この「膿」が膨張して「悪質なバブル」となり,最終的に恐慌(株価・資産の大暴落)を引き起こす。恐慌とは,溜まった膿を排出するための避けられないプロセスであり,景気循環の本質である。
1929年のウォール街大暴落(ブラックサーズデー)を始めとする過去の恐慌事例は,その背景に強欲な投機家による空売りやインサイダー取引といった人為的な詐欺行為が存在していたことを示唆している。すなわち,恐慌の発生は,市場の原理だけでなく,投機家による意図的な株価暴落操作によって引き起こされる場合が多いのである。
1945年以降,「国家・政府」はケインズ経済学の影響を受け,恐慌や不況に対し財政介入を行うようになった。特に「Too big to fail」政策は,溜まった「膿」を排出せず,赤字国債による資金注入で企業を延命させることを可能にした。これは,経済システム内に爆弾となりうる不良債権を温存させ,企業の健全な新陳代謝を妨げ,実態を伴わない「虚構のバブル」を一層拡大させる結果を招いている。GM救済やシリコンバレー銀行破綻後の大手銀行への預金集中などは,この政策の具体的な帰結である。
日本経済の構造的衰退と「草刈り場」化
日本経済は「失われた30年」の帰着として,G7諸国で唯一実質GDPが停滞,実質賃金も下落し,「貧困の国・日本」へと転落した。この主因は,日本政府が産業政策や技術開発政策を怠り,「イノベーション」の精神を喪失した点にある。
日本は現在,アメリカのDeep Stateにとっての「草刈り場」と化しており,日本人の富が組織的に収奪されている。2000年代初頭の小泉政権の竹中大臣下が行った不良債権処理は,実態として日本企業の株式をアメリカのハゲタカファンドに安価で売り渡し,日本を株主資本主義へと移行させ,ウォール街の影響力を決定的に強めた。さらに郵政民営化もまた,国民の郵便貯金をウォール街に差し出すためのものであったと批判される。
現行のNISA(少額投資非課税制度)についても,運用先が米国のファンド企業(ブラックロック等)による米国企業への投資が中心であり,本質的にはアメリカの利益のために設定されたスキームである。AIバブル崩壊による大恐慌が発生した場合,NISA投資家は財産を失う一方で,ブラックロックなどのファンド企業は被害を免れる構造にあると警告される。
AIバブル崩壊と次なる大恐慌の可能性
現在のAIバブルには「大きな膿」が蓄積していることは疑いようがない。特に,AI関連投資におけるNVIDIAのGPUのような短寿命資産への過大な支出や,激しい技術革新によるデータ資産の陳腐化は,数年以内に投資リターンを生み出す必要性を高め,バブル崩壊の予兆となっている。
大恐慌のトリガーは,依然として「ウォール街の投機家による空売りを通じた株価暴落操作」が最も可能性が高い。しかし,AIバブルにおいては,米中冷戦に起因するTSMCの生産キャパシティ問題という「生産と消費のアンマッチ」が,投機家の操作とは別の要因として崩壊を招く可能性も示唆される。
AIバブルの中心企業群(xAI,SpaceX,OpenAI,NVIDIAなど)は,株式価値によって設備投資を拡大しているものの,「本業ビジネス」による収益は未だ確立されておらず,「死の谷」を超えることが危惧されている。さらに,台湾有事が現実化した場合には,AI半導体を一手に担うTSMCが危機に瀕し,これがAIバブル崩壊の決定的なトリガーとなりうる。
いずれ,悪質な投機家が利益確定のためにAIバブル崩壊を仕掛け,世界は大恐慌に襲われ,その後の30年間は世界的な大不況が続くであろうと予測される。この危機的状況を乗り越え,日本の再興を実現するためには,日本人が失われた伝統文化,道徳心,独立心を取り戻すことが不可欠であると結論づける。
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