世界経済評論IMPACT(世界経済評論インパクト)

No.3928
世界経済評論IMPACT No.3928

「米百俵の精神」はどこへ行ってしまったのか:参議院選挙の各党の主張を見て思うこと

小林 元

(元文京学院大学 客員教授)

2025.08.04

 戊辰戦争で焼け野が原になった長岡藩に送られてきた米百俵を食に回さず人材育成のための資金に使ったという小林寅三郎の「米百俵の精神」は,江戸時代260年間が育てた日本人の美徳の一つとされてきたと思う。

 この精神が,数十年前だったと思うが小泉純一郎前首相によって高々と唱えられたことがあった。ところがどうだろう,今回の選挙では,国の税収が予想より増えたことを材料に消費税を減らすの,無くすの,あるいは一時金を給付するだのという国民受けする議論にあけくれている。

 そこには「国家の100年の計」を考えて増収はこれからの国民の将来の富を生み出すために使うという「米百俵の精神」はどこにも見られない。「インフレを上回る賃上げを実現して,30年の停滞から脱却する」ことを主張する政党もあるが,ではその賃上げを実現する収益をどのようにしてあげるのか。ITによる合理化だけでは不十分で,新たなイノベーションを生み出す必要があると筆者は考えている。

 それを生み出すにはいまなにをするべきなのか,そうした戦略的産業の議論が国会の場で本格的に議論されたということは聞かない。政治がこのようでは10年後に日本はG7の位置を果たして保てるのか危惧している。

(URL:http://www.world-economic-review.jp/impact/article3928.html)

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