世界経済評論IMPACT(世界経済評論インパクト)

No.3913
世界経済評論IMPACT No.3913

国立大学系スタートアップの最終課題と対策提言:専業会社員の事業参加による,市場開拓推進を!

白藤 香

(SPCコンサルティング株式会社Labo 所長)

2025.07.28

 2000年東大TLO立上げ集会に参加してから25年を節目とし,本稿では国立大学系スタートアップの最終課題と対策提言をまとめる。

最終分析結果

 スタートアップの大半は,研究知財所有者である大学教員とビジネス活動に転じた大学院出身の若手が事業活動を担っている。本年度も産学官連携の事業紹介イベントに参加,本件の最終課題は「マーケティング」にあり,過去から一貫して「市場開拓ができる現役専業の会社員が圧倒的に不足している」との結論に至った。

市場環境は大変化中

 現在AI導入が進行中で,市場自体が大転換の最中にある。市場改革を進めるためには,新市場戦略を持ち,逆境に立ち向かえる「玄人筋体制」が必要となっている。

有効な対策,参照する海外事例

1)「進化」したい会社員向け,スタートアップ転職の推奨を!

 既存人員構成では,市場開拓の具体的なダイレクション策定と実際に活動ができる即戦力が足りておらず,知財シーズの社会実装が国内市場だけで小規模感が否めない。海外市場を狙うにしても現役の適職人材に出会わない。そのため「何かに挑みたい」「自己進化を図りたい」と熱望する会社員,特に日本大企業勤務者にスタートアップでの就労を呼びかけたい。

2)ターゲット職種

 日系企業の海外マーケティング並びに営業職,戦略企画者らがターゲットで,スタートアップに勤務し戦略企画の起案から行動までを網羅,実績を上げていただきたい。

3)ゴールは経営職!

長年,海外・国内勤務者比較で知り得ることとして,日系の勤務者は総じてキャリアディベロップメントの幅が狭く,進化が浅い。

4)海外会社員の実践的参照事例

 他方,北米系会社員の多くは,専門分野の学位取得,数十人規模のマネジメント経験,副業の自営業で経営実践など早くから準備を進め,40代から「経営職」「事業コンサル,会計など専門職」「投資家」に転じるケースが大半である。

国立大学系スタートアップx専業会社員で,市場開拓の推しを!

 長年,大学スタートアップの改革提言をし,実証見聞を続けた最終結論として,やはり具体的なビジネス展開は「専業の会社員がやるべきもの」と懐落ちした。学術研究者の頭脳は更なる研究研鑽のために,事業展開の市場活動と数字管理の経営JOBは専業会社員が担うものと,職の分離は明確にした方が効率的との結論に至った。過去には横領事件もあったため,スタートアップは海外式経営と雇用で事業運営したほうが,時代と市場の「生き残り」が図り易いことを最終ビジョンとして記す。

[参照]
(URL:http://www.world-economic-review.jp/impact/article3913.html)

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