世界経済評論IMPACT(世界経済評論インパクト)

No.3728
世界経済評論IMPACT No.3728

日本社会における外国人留学生受入れの費用対効果:専門職で活躍してもらうための社会改革提案

白藤 香

(SPCコンサルティング株式会社Labo 所長)

2025.02.17

 移民受入れ国となった我が国は,留学生についても受入れが推奨され,そのための社会投資が盛んである。筆者は,過去二十年間の大学現場の状況を鑑み「留学生の育み方」に問題があると認識している。本稿では,その改善策について述べる。ただし本件は日本人のキャリア形成の共通項を含む。

1.既存留学制度の問題点-「学歴ロンダリング」

 留学生の出身国も多様となり,学内には大勢の仲間がおりコミュニティが形成され,学生同士の交流も盛んになっている。今どきは留学給付金の数も多く,コンビニでバイトをすれば月20~30万円にはなる。物価高の東京でも暮らしが成り立ち,学生個人の留学費用対効果は高い。他方,問題になるのが「学歴ロンダリング」と揶揄される「全く勉強をしない学生」の存在である。その多くはアジア系で勉学より「稼ぎ」を主目的としている。例えば大学院修士生は,専門職の期待も高いが授業中はネット三昧で出席日数も少ない。しかし過去二十年間「学位取得」が問題なくできている。

2.生活就労キャリアモデル-「修士」

 都内の国立・私立大学関係者に聞き取りしたところ,実験をやり論文を書く分野では比較的真面目とのことだが中には酷い者もいるという。日本語検定は高スコアで資格取得し,安定的な就業を実現している成功者が居る一方で,「修士の学歴があれば就職が楽」と日常会話程度の日本語で職業資格もなにもないが,日系や海外系法人に就業し就労ビザを取得,終身雇用制度下で安定的に暮らすモデルが一般的と聞く。そこは日本人学生のキャリアと被る部分もある。一部報道にあった「留学生が起業」の情報は多くなく,海外移民の人生はどこの国でも容易くない。

3.改善のための「3つの提案」

 移民社会を模索の最中,日本における留学生受入れの費用対効果を高める方向性を考え,3つの改善策を促したい。

1)就学ビザ

 「一年更新で成績要件を義務づける」。過去20年間の状態を鑑みると,期待どおりの人材育成には至っていない。他方,ナショナリズム等を事由に学内で摩擦を引き起こす事例もあるため,受入れ先からの評価制度を設ける(他国におけるビザ承認プロセスを参考に)。

2)教育現場

 特に大学院生は専門職として企業等からの期待が大きいため,社会投資の費用対効果を高めるためにも「他者の勉学意欲を削ぐ就学態度には改善を促す」。

3)社会全体

 努力し頑張る留学生には,就業機会を増やし生活相談にものり,「共に暮らし支え合う」という移民社会の土台を作り上げるべく,支援を行う。

4.まとめ

 日本社会が明るい未来を築くためには人材投資と専門職業人の育成は「肝」である。人口減が加速しても生産性向上が図れるように,「留学生」が専門的な仕事のできる仲間となれるように育んで行かねばばならない。

(URL:http://www.world-economic-review.jp/impact/article3728.html)

関連記事

白藤 香

最新のコラム