世界経済評論IMPACT(世界経済評論インパクト)

No.1910
世界経済評論IMPACT No.1910

東南アジア法整備にみる日本の新たな援助

川島 哲

(金沢星稜大学経済学部 教授)

2020.10.12

 国際協力銀行企画部門調査部「わが国製造業企業の海外事業展開に関する調査報告—2019年度海外直接投資アンケート結果(第31回)—」(2019年11月27日)において,東南アジア諸国へ進出する際の課題として上位に挙がってくるのが,「法制の運用が不透明」という点である(2020年10月7日最終アクセス)。

 日本政府は法制度というソフトインフラをいかに支援していくのかこれらが注目されている。当該地域へ進出する日系企業にとっても喫緊の課題である。

 内閣の第35回経協インフラ戦略会議(2018年2月27日)でソフトインフラが取り上げられ我が国の方向性が打ち出されている(2020年10月7日最終アクセス)。

 第一に,ソフトインフラは,制度・基準,技術・運用ノウハウ,人材育成等のソフト面でハードインフラを支える基盤であり,我が国が他国に先行した経験や課題解決を通じて培ったノウハウを活かせることから,質の高いインフラ投資の強みを活かせる分野である。

 第二に,ルール整備や人材育成を通じて,我が国の知見・経験を移転することにより,途上国の経済成長や現在世界が抱えている地球規模課題の解決に大きく貢献できる。ソフトインフラの海外展開を通じ,国際社会を主導し,積極的に発信するとともに,その海外展開をハードインフラの展開につなげる戦略的な取り組みを進めることが重要である。

 第三に,相手国のニーズを踏まえ,技術協力等を活用した戦略的な技術・運用ノウハウの移転や各省庁・機関等が連携した総合的な支援体制の構築に向けた取り組みが必要である。

 その点について以下のようなラオスの事例が今後の東南アジア諸国のひとつの新たな潮流となるのではないか。

 ラオスで民法改正,法案の起草支援,東南アジアの法整備に日本が存在感という記事が「日本経済新聞」2020年5月11日に載っていた。

 これについて考察していきたい。

 東南アジアを中心とした法整備支援で日本の存在感が高まっている。ベトナム,カンボジアに続き,月内にはラオスで日本が整備を支援した民法が施行される。

 日本は,ASEAN諸国の司法次官・局長級が出席するASLOM(高級法務実務者会合)に初参加する。サイバーセキュリティなど国境を越えた問題を議論するものとみられる。

 日本は,1994年のベトナムをはじめ,カンボジア,インドネシア,ミャンマーなどの法案の起草や法曹人材の育成に取り組んでいる。

 この目的は,法の支配や基本的人権の尊重といった概念を根付かせることで国際貢献に寄与することにある。

 法務省国際課は2018年に新設され,日本型法制度を東南アジアに導入する司令塔的存在である。

 ラオスは,日本の支援を受け,民法典を作成して,2020年5月内に施行する。作成は着手してから6年,準備を含めると15年かかった。

 同国には,契約法や財産法などは個別にあったが,まとめた一つの民法典を作るのが目的であった。

 カンボジアでは1970年第のポル・ポトによる大虐殺で知識人がいなくなり,従来の寄り合い型でなく,日本とほぼ同じ内容の民法や民事訴訟法を輸出した。

 ベトナムにおいては,日本が行政訴訟法や民法,破産法などを支援した。

 このようなソフトインフラ支援はこれから我が国の大きな柱となっていくことのではないか。注視していきたい。

(URL:http://www.world-economic-review.jp/impact/article1910.html)

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