世界経済評論IMPACT(世界経済評論インパクト)

No.1732
世界経済評論IMPACT No.1732

ASEANのコロナウイルス感染動向(4):ベトナムは収束に成功,インドネシアとフィリピンは感染拡大続く

石川幸一

(亜細亜大学 特別研究員)

2020.05.04

 ASEANのコロナウイルス感染者累計(以下同じ)は4月20日時点発表(集計は19日)の2万8243人,死者は1144人から27日発表(集計は26日)の3万9472人,死者1411人,5月4日発表(集計は3日)の4万8610人,死者1636人に増加した(1)。シンガポールの感染者が4581人増加し1万8625人となった。ただし,シンガポールの死者は18人と極めて少ない。死者が最も多いのはインドネシアで845人である。致死率はインドネシアが7.6%と最も高くフィリピンが6.6%である。

 ベトナムは感染者数271人,死者ゼロコロナ対策が最も効果をあげている。感染者数が少ない要因として検査件数が少ないことがあげられるが,ベトナムの5月3日時点の累計検査件数は26万1004件,100万人当たり検査件数は2681件で日本(1449件)の1.85倍である。100万人当たりの死者数はフィリピンが6人でもっと多く,シンガポール,インドネシア,マレーシアが3人,タイは0.8人,ベトナム0人である。

 ベトナムは4月3日以降感染者が一桁あるいはゼロとなっている。4月16日以降は,24日(2人),5月3日(1人)を除き,ゼロである。タイも4月21日以降10人台,27日以降一桁と収束しつつあり,5月3日は1人だった。マレーシアも減少傾向だったが,5月2日105人,3日122人と再び増加している。インドネシアは4月24日の436人がピークであり,その後は増減を繰り返しており,5月1日は433人,3日は349人と収束の兆しは見えない。フィリピンは3月30日の538人がピークであり,4月25日に105人に減少したが,200人前後での増減が激しく5月3日は295人だった。

 なお,ラオスとミャンマーは公表されている以上の感染者がいると推測される。各国の状況は次のとおりであり,感染防止に向けて厳しい規制が実施されている(2)。

ブルネイは,3月10日にマレーシアからの帰国者の感染を確認した。5月3日の累計感染者は138人,死者は1人,100万人当たりの死者は2人,検査件数は1万4262件,100万人当たりの検査件数は3万2600件である。自国民およびが外国人の海外渡航を禁止している。

カンボジアは,1月27日にメコン川の観光クルーズで3名の英国人の感染者がみつかった。5月3日時点の感染者は122人,死者は0人である。検査件数は1万2378件である。政府は,シエムリアップの人気観光スポット,全国のカジノを封鎖し,首都プノンペンの学校を閉鎖した。

インドネシアは,3月2日に初めて感染者が確認された。長期間感染者ゼロだったが,5月3日には感染者1万1192人,死者845人に増加した。検査件数は11万2965件,100万人当たり413件である。首都ジャカルタで多くの感染者が見つかり,ジャカルタ首都圏と地方都市の人の移動が5月31日まで禁止されている。4月2日から外国人の入国は禁止されている。

ラオスは,中国との国境封鎖とフライトの停止などの対応を取っていたが,3月24日に2名(ホテル従業員と観光ガイド)の感染が確認された。5月3日時点で19人となっている。検査件数は2184件である。3月30日から4月19日まで外出禁止,公務員の出勤禁止,食品・医薬品を除く工場の操業停止,出入国禁止など厳しい規制が実施されている。

マレーシアは,1月25日に感染者が確認された。5月3日の感染者は6298人,死者は105人である。検査件数は19万5833件,100万人当たりの件数は6051件である。2月27日から3月1日に行われたクアラルンプール郊外での1万6000人規模の宗教行事参加者から多数の感染者が確認されている。3月18日から4月28日まで,全国での移動制限が実施されている。集会の禁止,宗教施設・事業所閉鎖,全教育機関の閉鎖,外国人の入国禁止など厳しい規制が実施されている。

ミャンマーは,3月23日に米国および英国からの帰国者2名(ミャンマー人)の感染が確認され,5月3日時点で感染者155人,死者6人である。検査件数は8703件,100万人当たりの件数は160件である。中国からの入国ビザに続き,3月29日から全ての国に対し入国ビザ発給が停止され,3月30日から国際便の着陸が認められていない。

フィリピンは,1月30日に最初の感染者が確認され,5月3日時点で9223人,死者607人となっている。検査件数は12万736件,100万人当たり件数は1102である。ルソン地域は3月17日から4月14日まで封鎖され,往来が禁止されていたが,30日まで延長された。外出は食品,薬品および生存に必要な物資購入を除き規制されている。入国ビザ発給停止,米国との軍事訓練の中止などが発表された。

シンガポールは,1月23日に感染者が確認された。隔離命令に従わないと1万シンガポールドル(約70万円)か6か月以下の禁固もしくはその両方という厳しい規制を行っている。感染者数は4月20日の7365人から26日には1万3624人に増加,5月3日時点で1万8205人に増加している。死者は19人と極めて少ない。外国人労働者の感染が増加していると報じられている。検査件数は14万3919件,100万人当たり2万4600件と欧米並みに多い。4月7日から5月4日まで生活に必要なサービスを除く職場を封鎖した。

タイは,1月13日に感染者が確認された。5月3日の感染者は2987人,死者は54人である。3月26日から4月30日まで非常事態措置(午後10時~午前4時夜間外出禁止令)が実施されている。バンコクでは,レストラン,マーケット,学校,理髪店,スポーツスタジアム,ゴルフコース,マッサージ店などが閉鎖されている。開店が認められているのは,持ち帰りレストラン,スーパーマーケット,薬局,食品マーケットである。4月28日に非常事態措置の一か月延期が発表され,30日には危険度重要度に応じた措置の緩和が発表された。労働許可証をもたない外国人の入国は禁止である。

ベトナムは,1月23日に感染者が確認された。5月3日の感染者数は271人,死者はゼロである。4月3日以降感染者発生数は一桁であり,16日以降は24日の2人と5月3日の1人を除き,ゼロであり,収束に成功したといえる。ベトナム航空の国際線運航の停止,インバウンドフライトの停止,ホーチミン市で30名以上規模のレストラン閉鎖などの感染防止策を実施していたが,3月30日に全土のパンデミック宣言を首相が行い,4月1日から22日まで不要不急の外出禁止(主要都市)となっており,23日に外出禁止を原則解除した。4月8日,9日にダナンで開催予定のASEAN首脳会議は6月に延期された。

*本稿の内容は執筆者個人の見解に基づいており,国際貿易投資研究所および文眞堂の見解を示すものではありません。また,最新のデータについては,関連機関(注参照)などでご確認ください。

[注]
  • (1)感染者数などは,ジョン・ホプキンス大学による。最新のデータは同大学URLでアクセスできる。
  • (2)各国の状況は,ASEAN Biodiaspora Virtual Centre(ABVC), “Risk Assessment for International Dissemination of COVID-19 to the ASEAN Region”などによる。最新状況については,ジェトロ情報を参照。緊急経済対策はジェトロおよび日本アセアンセンターホームページに掲載されている。
(URL:http://www.world-economic-review.jp/impact/article1732.html)

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