世界経済評論IMPACT(世界経済評論インパクト)

No.1705
世界経済評論IMPACT No.1705

ASEANのコロナウイルス感染動向(2):シンガポールの感染者が最大,死者はインドネシアが最大

石川幸一

(亜細亜大学 特別研究員)

2020.04.20

 ASEANのコロナウイルス感染者はついに2万人を超えた。4月20日時点の感染者数は2万8243人,死者は1144人である(注1)。感染者数が最も多い国はシンガポールで6588人,死者が最も多いのはインドネシアで582人である。シンガポールの死者は11人と少ない。致死率はインドネシアが8.8%と最も高くフィリピンが6.5%である。インドネシアの感染者数は6575人と第2位である。

 ベトナムは感染者数268人,死者ゼロコロナ対策が最も効果をあげている。感染者数が少ない要因として検査件数が少ないことがあげられるが,ベトナムの4月20日時点の累計検査件数は20万6253件(ベトナム政府)と少なくはない。ちなみに,日本は11万2816件である。他のASEAN主要国の検査件数は,インドネシア4万2219件,マレーシア10万3892件,フィリピン5万9928件,シンガポール9万4796件,タイ10万498件でベトナムが圧倒的に多い。タイは4月12日以降感染者発生数が30人前後と減少しており,マレーシアも4月15日以降の感染者数が100人以下と対策が効果を現しつつある。なお,ラオスとミャンマーは公表されている以上の感染者がいると推測される。各国の状況は次のとおりであり,感染防止に向けて厳しい規制が実施されている(注2)。

ブルネイは,3月10日にマレーシアからの帰国者の感染を確認した。3月26日の感染者114人が4月20日には136人,死者1人に増加した。自国民およびが外国人の海外渡航を禁止している。致死率は0.74%,倍加日数は25日である。

カンボジアは,1月27日にメコン川の観光クルーズで3名の英国人の感染者がみつかった。感染者は3月26日の98名から4月20日には122人に増加した。倍加日数は25日である。政府は,シエムリアップの人気観光スポット,全国のカジノを封鎖し,首都プノンペンの学校を閉鎖した。

インドネシアは,3月2日に初めて感染者が確認された。長期間感染者ゼロだったが,3月26日の感染者893名,死者78名から4月20日には感染者6575名,死者582名に増加した。致死率は8.8%である。首都ジャカルタで多くの感染者が見つかり,首都は3月20日から非常事態宣言下にある(4月19日まで)。ジャカルタの選手村が病院(2万2000人収容)に転用されている。4月2日から外国人の入国は禁止されている。中国は迅速検査キット,感染防御衣など40万トンの援助物資をインドネシアに供与した。

ラオスは中国との国境封鎖とフライトの停止などの対応を取っていたが,3月24日に2名(ホテル従業員と観光ガイド)の感染が確認された。4月20日時点で19人となっている。3月30日から4月19日まで外出禁止,公務員の出勤禁止,食品・医薬品を除く工場の操業停止,出入国禁止など厳しい規制が実施されている。米国はラオスに感染防止のための装備機器などの供与を行った。

マレーシアは,1月25日に感染者が確認された。3月26日の感染者2031名,死者24名が4月20日には5389人,89人に拡大した。致死率は1.65%である。2月27日から3月1日に行われたクアラルンプール郊外での1万6000人規模の宗教行事参加者から多数の感染者が確認されている。3月18日から4月28日まで,全国での移動制限が実施されている。集会の禁止,宗教施設・事業所閉鎖,全教育機関の閉鎖,外国人の入国禁止など厳しい規制が実施されている。

ミャンマーでは,3月23日に米国および英国からの帰国者2名(ミャンマー人)の感染が確認され,4月20日時点で感染者111人,死者5人である。致死率は6.35%,倍加日数は2日である。中国からの入国ビザに続き,3月29日から全ての国に対し入国ビザ発給が停止され,3月30日から国際便の着陸が認められていない。

フィリピンは,1月30日に最初の感染者が確認され,3月26日の感染者707名,死者45名が4月20日時点で6259人,死者409人とともに急増している。致死率は6.5%に上昇している。ルソン地域は3月17日から4月14日まで封鎖され,往来が禁止されていたが,30日まで延長された。外出は食品,薬品および生存に必要な物資購入を除き規制されている。入国ビザ発給停止,米国との軍事訓練の中止などが発表された。

シンガポールは,1月23日に感染者が確認された。隔離命令に従わないと1万シンガポールドル(約70万円)か6か月以下の禁固もしくはその両方という厳しい規制を行っているが,感染者は3月26日時点の683人から4月20日には6588人に増加している。死者は2人から11人に増加した。致死率は0.16%と低い。4月7日から5月4日まで生活に必要なサービスを除く職場を封鎖した。

タイは,1月13日に感染者が確認された。3月26日の感染者1045人,死者4人から4月20日には2765人,47人に増加した。致死率は1.69%である。3月26日から4月30日まで非常事態措置(午後10時~午前4時夜間外出禁止令)が実施されている。バンコクでは,レストラン,マーケット,学校,理髪店,スポーツスタジアム,ゴルフコース,マッサージ店などが閉鎖されている。開店が認められているのは,持ち帰りレストラン,スーパーマーケット,薬局,食品マーケットである。マレーシア,ラオス(Nakhon Panam),カンボジア(Sa Kaeo)との国境(陸路)が閉鎖されている。労働許可証をもたない外国人の入国は禁止である。

ベトナムは,1月23日に感染者が確認された。3月26日の感染者153人から4月20日には268人に増加した。死者はゼロである。ベトナム航空の国際線運航の停止,インバウンドフライトの停止,ホーチミン市で30名以上規模のレストラン閉鎖などの感染防止策を実施していたが,3月30日に全土のパンデミック宣言を首相が行い,4月1日から22日まで不要不急の外出禁止(主要都市)となっている。4月8日,9日にダナンで開催予定のASEAN首脳会議は6月に延期された。

[注]
  • (1)感染者数は,ジョン・ホプキンス大学による。
  • (2)各国の状況は,ASEAN Biodiaspora Virtual Centre(ABVC), “Risk Assessment for International Dissemination of COVID-19 to the ASEAN Region” April 15, 2020.などによる。最新状況については,ジェトロ情報を参照。緊急経済対策は日本アセアンセンターホームページに掲載されている。
(URL:http://www.world-economic-review.jp/impact/article1705.html)

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