世界経済評論IMPACT(世界経済評論インパクト)

No.1642
世界経済評論IMPACT No.1642

バーニー・サンダースとは誰か?

吉川圭一

(Global Issues Institute CEO)

2020.03.02

 サンダースはアイオワ党員集会で2位になった。そこでは最初の投票で15%取れなかった候補者に入れた人は二回目投票で別の人に投票できる。代議員票もある。そして集計用アプリの不具合のため結果が非常に不透明になった。

 アイオワ党員集会の勢いでは,サンダースに有利になる筈だったが,それが変わる可能性もあった。

 そして混乱の原因となった投票アプリを開発したシャドー社の代表者は元ヒラリーの参謀。同社の親会社的な存在であるNPOアクロニウムの代表はブディジェッジの参謀。

 シャドー社はアクロニウムが間に入り夏の民主党大会用に別の投票アプリを売り込んでいる。悪意で解釈すると何らかの意味でヒラリーに有利な投票操作が行われる可能性がある。

 サンダース派は7月の党大会の役員にヒラリー派が多過ぎることに不信感を抱いている。このまま大混戦で誰も過半数の代議員を取れなかったら,予備選で戦わなくとも夏の党大会でヒラリーが大統領候補に選ばれる可能性がある。

 そして2月11日,予備選がニューハンプシャーで行われた。結果はサンダースは25.8%,ブディジェッジ24.4%,クロブチャー19.7%,ウォーレン9.3%,バイデン8.4%。

 だがサンダースは,2016年の予備選挙でヒラリーを2桁で破り,投票の60%以上リードした。しかし今回は候補者乱立により26.7%しか獲得できなかった。

 そして11月にトランプを破るためには,強い投票率を必要とする。

 アイオワのコーカスで,2008年は初参加者44%増に対し,2016年より今年は35%初参加者数が少ない。

 ニューハンプシャーの投票率は2008年の民主党の予備選挙を上回ったが,民主党の候補者が増えて選挙が過熱したことと,州の人口が過去12年間で増加した影響は大きい。さらに重要なことには,無党派層を引き離す共和党の予備選もなかった。

 ニューハンプシャー州では「無党派だ」と名乗れば自分が支持している政党の反対側の政党の予備選挙でも投票できる。もし共和党の予備選が形式的なものではなく盛り上がっていたら,サンダースに投票するような無党派的な人は,共和党の予備選の方に行ったかも知れない。

 そしてサンダースは,2月22日のネバダ党員集会で決定的な勝利を収めたように思われた。サンダースはヒスパニックの強力な支持を築いている。彼がヒスパニック系の支持率で33%,前副大統領のバイデンが22%。だが黒人有権者の間では対等。

 投票率は高く75,000人以上が初期投票に参加し,4年前の投票率にほぼ一致した。

 結果としてサンダースは,投票の46.6%を獲得。バイデンは19.2%。但し党員集会の代議員の割り当ては複雑なので,サンダースは,29.3%の代議員,ウォーレンは18.7%で2位。バイデン17.3%で3位。

 サンダースは,45歳未満の約10人中6人を獲得した。そして,彼はヒスパニック系の来場者の約半分を獲得し,他の候補者よりもはるかに多かった。

 但し過去4年で400万人のヒスパニックが18歳になっており,サンダースに大きな利点を与えている。逆にいうと若者にはヒスパニックが多いので,若者の支持とヒスパニックの支持は重複しており,サンダースが絶対的に強いとは,言い切れない。

 ネバダ州の民主党党員集会に来た人の半分は初めて党員集会に来た若者等だったが,来た人全体の人数は4年前と大きな変化はない。この新しい支持を開拓できるが古い党支持者にアピールできないことがサンダースの今後の限界になる。

 しかもネバダ党員集会では第一回投票で15%未満だった候補者の票が第二回投票で上位者に割り振られるので,34%の支持だったサンダースが40%以上支持されたように見える。そして党員集会では大勢の人前で誰に投票するかを決める。サンダース派も各投票所にいて,彼の名前を叫びながら大騒ぎしていた。サンダース大勝の理由の一つではないか?

 サンダースは学費無償化財源として「株式取引に0.5%の税-株式100ドルごとに50セント-債券取引に0.1%の手数料,およびデリバティブ取引に0.005%の手数料」を課すという。これは長期的には,多くの人の退職金を含む活発に取引される資金に深刻なコストを課す。

 実はサンダースと類似した税制改革を,トランプ氏も4年前の予備選挙の最中には主張していて,今年の選挙が終わって共和党に気兼ねがいらなかくなったトランプ氏の方が期待できると思う。

 なお最後に昨年を通したサンダーズの政治資金9600万ドルの内,160万ドルは金融,保険等の業界から来た。今の格差拡大は自由経済を脅かすとウオール街の人々も考えているからだと言う。だが同じ業界からトランプ氏に400万ドル献金されている。これはサンダースが受かった時の「保険」か,あるいは彼の国民皆保険の掛金の運用で儲けることを狙った保険=金融業界の作戦だろう。

 ヒラリーは医療保険政策の関係で同じ業界から莫大な献金を受けて来た。それをサンダースに奪われないために彼を落とす謀略を企んでいるのかも知れない。逆に所詮サンダースも政治家で有る限り,そういう利権を奪う目的で動いていると見るべきだと思う。

(URL:http://www.world-economic-review.jp/impact/article1642.html)

関連記事

吉川圭一

国内

アングロアメリカ

最新のコラム