世界経済評論IMPACT(世界経済評論インパクト)
ファーウェイ・ビジネスモデルが示唆する日本の対応
(愛知淑徳大学ビジネス学部 教授)
2019.04.22
ファーウェイの発展に脅威を感じ始めているグローバル企業の一つに,韓国の三星グループなどが挙げられよう。
実際に韓国国内の世論を見ていると,「ファーウェイは本年3月時点で世界の通信設備市場1位,スマートフォン市場3位に浮上したIT企業となっている。スマートフォン市場で三星電子とアップルを超え,3年後の2021年にはグローバルトップに立つと公然と豪語している」との危機意識を前面に出したコメントをファーウェイに対してぶつけている。
そして,上述したように,こうした中国本土企業のタチの悪い点は,中国本土政府の国家戦略の下で育成されており,例えば,ファーウェイは,中国人民解放軍にも通信設備を納入するなどして発展基盤を作り,更なるグローバル発展を目指し,5年前には,「三星グループをベンチマークとする」と三星グループの発展形態を人材引き抜きも含めて研究し,半導体,スマートフォン,通信設備など三星グループが得意とする事業分野でも追随,更に最近の1〜2年,ファーウェイは,頻繁に人工知能(AI),半導体,スマートフォン,第5世代移動通信(5G)の分野で世界初・世界最高の記録を打ち立てて,グローバルトップ企業への道を進み,その発展は勢いを増している。
そして,こうしたファーウェイの発展の陰にも,中国本土政府との連携が見え隠れしており,例えば,最近開発されたAIプロセッサーには寒武紀科技(カンブリコン)という中国本土企業の技術が採用されているが,この寒武紀科技は中国社会科学院のコンピューター研究所を前身とするスタートアップ企業であり,中国本土政府レベルで集中的に育成したAI技術が利用されているのである。
以上のような点を眺めると,自由主義経済陣営の民間企業からすれば,ファーウェイなどの中国本土企業は,中国本土政府との連携によって,国家戦略の下で,ある意味,国家に庇護され,国家に支援もされて発展しており,自由主義経済陣営の標準からは逸脱したアンフェアな存在と映る。
従って,こうしたアンフェアを是正すべく,例えば,米国のトランプ大統領が,「知的財産権の侵害」などをリーズニングとしながら,中国本土に圧力をかけ,是正を求める姿に筆者は応援する気持ちを抑えることが出来ない。
全てとは言わないが,一部の中国本土企業のグローバル発展は,自由主義経済陣営の民間企業からすれば,間違いなくアンフェアであると筆者には映るからである。
しかし,多分,こうした国際的な,正当なる批判に対しても,中国本土は,力技と既成事実化を以って跳ね返し,更に,これを,「一帯一路戦略とAIIBの発展を背景にして,先ずはユーラシア大陸を席巻して,中国本土のスタンダードこそ,世界のスタンダードである」と上手に切り替えて,かわし,そして乗り越えていこうとすると思われる。
そして,そうした中国本土の戦略が成功する可能性は高いと筆者は見ている。
さて,こうなると,日本は一体どうしたら,良いのであろうか?
筆者は二種類の対応を考えている。
いずれも,当面は現行の国際基準を守りつつ,「日本政府の可能なる,人,もの,金,情報に関する側面支援」を前提としつつ,
- ①日本オリジンのグローバル企業に対しては,規模の経済性をエンジョイ出来るグローバル企業育成を意識,徹底したグローバルマーケットシェア確保,拡大を目的とする企業発展を促し,先進国・日本国家の象徴となる企業を,民間企業の経営意思を尊重しつつ,日本と言う国家全体として育成していく。
- ②中小企業に対しては,規模の経済性を追うグローバル企業に対して,同様に規模の経済性を追いながら,発展を模索する企業に対しては,上記①に類似し,特にグローバル顧客の発掘,確保,拡大に向けた側面支援を図り,発展を促す。一方,少量変量多品種高品質で高利潤を目指せる中小企業に対しては,あくまでも,高品質を追求出来る為の側面支援を続け,発展を促す。
と言ったことが,「日本国としての国家運営の基本」として重要になると筆者は考えている。
そして,我々日本国民が国民として守るべき意識は,
- ①世界が必要としているものやサービスを常に意識,そこに真の需要があるということを見定める能力を持つこと。この際,可能な限り,日本企業しか,提供出来ないようなものやサービスの分野を探す。
- ②その上で,その需要に応えるようなものやサービスを開発できる能力を持つ。
- ③提供する,ものやサービスの品質を「丹精込めた仕事ぶり」を背景として,高める一方で,コスト削減を図り,これを以って,顧客に対して,適正価格(利益の追求をしすぎてはならない)で提供する。
- ④こうしたことを徹底し,世界から「必要とされる国家」となり,可能な限り,世界から尊敬されつつ,国家運営を図る。
と言ったことが肝要ではないかと筆者は考えている。
そして,日本国民にも夢を与え,国民の誇りを生み,世界に貢献する国家を目指す,日本が今,すべきことは,こうしたことではないだろうか。
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