世界経済評論IMPACT(世界経済評論インパクト)

No.1327

ミャンマーとベトナムにみる教育分野での外資進出への制度の変化

川島 哲

(金沢星稜大学経済学部 教授)

2019.04.01

 ミャンマーでは複式簿記が義務化されていない現状にある。単式簿記なので前払いや繰り延べ,償却という概念がない。税制も単式簿記である。これらはJICAなどが人づくりということで少しずつ業務指導を行っているが,今後の会計面での人づくりという面では強化していくべき課題である。

 これは日本のように複式簿記が一般的な国にとっては驚きである。今後は,ODAなどにとどまらず簿記学校などが進出することで,この環境が変化していくのではないかと筆者は強く感じた。

 例えば,2015年にミャンマー商工会議所連盟が主催し,日本商工会議所や国際協力機構(JICA)が共催し,日商簿記啓発セミナーを開いている。JICAミャンマー事務所の中澤所長(当時)今後,特に製造業関連では日商簿記との親和性もあり,日系企業の進出に応じて日商簿記資格への要請も高まっていくこと,またミャンマー企業においても健全な企業発展において必要不可欠である財務諸表がしっかりと作成されることが求められていることが述べられた(注1)。

 それからのミャンマー及びベトナムの制度においてドラスティックな変化が起きている。

 ミャンマーとベトナムでは教育分野に外資の進出を後押しする流れが出てきている。まず,ミャンマーについてであるが,ミャンマー投資委員会(MIC)は2018年4月20日,教育分野で100%外資による投資を認める通達(No.7/2018)を公布した。

 ミャンマーでは国家教育法(2014年9月30日制定)が存在するが,関連する細則や通達がなかったため,外資企業が教育分野に投資する際の手続きが不明確だった。他方,企業投資管理局(DICA)は従来から,公開されていない内部規則を理由として,教育分野に関する投資の外資比率は最大50%までという指示を出していたとされる。

 同通達により,語学学校や職業訓練校などについて100%外資での投資が認められること,投資法やその規則・通達および国家教育法を順守すべきことなどが明確になった。インターナショナルスクールといった大規模な投資が必要なものはこの通達の対象となり得るが,小規模な語学学校のようなものは想定していない可能性がある。規模の大小にかかわらず外資による民間学校の設立ニーズは高く,小規模な投資を受け入れないという趣旨ではないことが期待されるものの,今後の実務面での運用が注目される(注2)。

 次にベトナムについてである。

 ベトナムにおける教育分野での外国からの投資,協力に関する政令86/2018/ND-CP(以下,政令86号)が8月1日に施行された。政令86号は,(1)外国との教育・訓練分野での提携,(2)外国資本を有する教育施設の設立,(3)ベトナムにおける外国教育機関の駐在事務所の設立について定めたもので,これらについて規定していた政令73/2012/ND-CPは失効した。

  • 第1に,物理的施設を建設せず賃貸することが認められた。
  • 第2に,短期訓練・養成施設を設立する際の設立許可決定書の取得が不要になった。
  • 第3に,外国資本を有する幼児教育施設・普通教育施設において,外国教育プログラムを学ぶベトナム人が,全体の50%未満であれば認められるようになった。
  • 第4に,大学の設立に必要な最低投資資本額が3,000億ドン(約14億4,000万円,1ドン=約0.0048円)から1兆ドンに引き上げられた。

 日本からの教育分野への投資件数は2016年の9件から2017年は13件と増加している(注3)。

 しかし,手続きの不備でトラブルに発展するケースも生じており,政令86号を踏まえた慎重な対応が求められる

 今後日本からは,学習塾や予備校のみならず簿記学校などを含め多面的な学校が進出していくことが期待されている。また,高等教育機関の提携をはじめとした展開もいかなるものになるのかきめ細かく注視していきたい。

[注]

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