世界経済評論IMPACT(世界経済評論インパクト)

No.1137

トランプは中間選挙に勝てるか? 対イラン,対中国戦争は,いつ起こるか?

吉川圭一

(Global Issues Institute CEO)

2018.08.27

 8月7日オハイオでの下院議員補欠選挙で,共和党候補は勝ったが1%未満の僅差だった。2016年にトランプは11%の支持を得た,共和党の地盤であった。VOXが8月10日に配信した“A blue flood, more than just a wave”によれば共和党候補に投票した共和党支持者82%に対し民主党候補に投票した民主党支持者91%。女性,若者,マイノリティが中心。無党派層の3分の2も民主党に投票。

 Washington Examiner が8月3日に配信した“Independent voters a major headache for the GOP as midterm elections loom”によれば,エコノミスト誌の調査で26%もの無党派層が34%対28%で民主党有利に傾いている。彼らの間でのトランプ支持率は全体が45%なのに対し36%。

 またThe Hillが8月6日に配信した“Women poised to take charge in Dem majority”によれば,民主党は共和党の3倍の女性候補者を擁立し,トランプに批判的な女性票を取り込む。8月8日に配信した“Latino candidates set to play most prominent role ever in presidential race”では,2016年に有権者資格を持つヒスパニック系は2700万人。実際に投票に来たのは1300万人。そこで民主党は,共和党の有力者の選挙区にヒスパニック系候補者を擁立し,この票を掘り起こす。またWashington Examinerが8月7日に配信した“Blacks’ approval of Trump reaches a high of 21% and NAACP charges ‘racism’”ではNAACPが同日に行った調査で,トランプに対する黒人支持率は21%と4月の倍だが,黒人等の75%は,トランプは自分達を軽視していると考えている。

 Roll Callが7月24日に配信した“Polling Still Points to Rough November for Republicans”では,白人間での共和党支持は50%,不支持は41%。これは2016年には60%対38%だった。65歳以上の間でのトランプ支持率は44%,不支持55%。これは2016年には53%対45%。逆にWashington Examinerが7月19日に配信した“Youth voter surge, up to 61% of the newly registered”では,18歳から29歳までの若者の有権者登録が61%増加。

 またWashington Examinerが7月13日に配信した“Democrats lead GOP by 12 million registered voters, 40% D, 29% R, 28% I”では,有権者登録した人の内で40%が民主党支持,共和党支持は29%で無党派が28%だった。つまり民主党支持の熱意が共和党支持の熱意を約10%上回っている。The Hillが7月27日に配信した“Dems have midterm edge, but it’s not historic”ではオバマ民主党が共和党に63議席奪われた2010年の選挙の時は,この数字は共和党が15%上回り,ブッシュ共和党が民主党に32犠牲を奪われた2006年の選挙では民主党が共和党を32%上回っていた。この時の民主党の支持率は15%共和党を上回っていたが,2010年に共和党は民主党を約5%上回っていたのみ。これは大統領の支持率と関係がある。トランプの今の支持率は,2006年のブッシュよりは高いが,2010年のオバマよりは低い。

 The Hillが8月4日に配信した“Trump roars into rally season”ではトランプ氏の共和党内での支持率は90%だが,全国的支持率は43.1%。不支持52.9%。つまりトランプ氏は共和党をまとめる力はあるが,それ以外の人々の反感を買い易い。そのため上記のような数字が出ている。

 このままでは共和党に望ましくない。トランプ氏がオハイオ州12区より低い差でヒラリーに辛勝した下院選挙区が45もある!

 では,どうしたら良いか? NewsWeekが8月9日に配信した“WHAT HAPPENS IF IRAN CLOSES WORLD’S MOST IMPORTANT OIL ROUTE? PRICES RISE AND WAR LIKELY”という記事によれば,トランプ大統領はオハイオの補欠選挙と同じ日に,11月までにイランの石油輸出をゼロにする新しい制裁を発表。同じ日に中国への報復関税を更に引き上げると発表。いずれも米経済に悪い影響を与えかねない。そのようなトランプの国内経済を一次的にでも無視した外交政策が,同氏の不支持の原因と指摘されているにも関わらず。

 実は第二次大戦後の米大統領で中間選挙で議会の自党の議席を増やしたのは,2002年のブッシュしかいない。その理由は911とアフガン戦争から1年しか経っていなかったからだ。

 トランプが予備選挙さらには大統領再選を乗り切るには,ここで何かの軍事衝突を起こす方法がある。特に米国民に不信を買っているイランの石油輸出を11月までに止めると言うのは,予備選挙までに対イラン戦争を起こすのが目的ではないか? 中国との戦争は2020年の再選の前くらいではないか? 中国の南シナ海進出の速度からすると,もう少し先かと私は思って来たが,トランプ氏の支持率不振が続けば,2020年年初くらいかもしれない。実際トランプ政権は,オハイオ補欠選の2日後に宇宙軍創設の具体的な準備に入った。それは対中国も重要な目的の一つであり,2020年までには完成させると言う。

 米国が中国に対し宇宙軍創設が遅れていた理由は制服軍人も含むワシントンの既成官僚組織間での予算やポストの奪い合いが大きかった。そこで既成官僚と深い関係のある民主党にも共和党主流派にもできなかった。しがらみの無いトランプ政権だから出来た。中国の宇宙軍開発状況を見ると,間に合うかどうか不安は大きい。

 このように中国は(そして弾道ミサイルや核の開発を進めるイラン)も世界にとって危険な国だ。トランプが,自らの大統領の地位を守るためにも,何らかの形で戦争を仕掛ける可能性は,低くない。どうせなら早くやる方が被害が少ないと思う。

 早ければイランは今年10月,中国は2020年年初。それは資源やシーレーンの関係で,日本も巻き込まれる。日本の防衛産業には良いビジネス機会だろう。

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