世界経済評論IMPACT(世界経済評論インパクト)

No.1036

TPP11の最終目標はFTAAPの創設

石川幸一

(亜細亜大学 教授)

2018.03.19

 3月8日にチリのサンチャゴでTPP11の署名が行われた。チリで米国を除くTPP署名11カ国の閣僚会合が開催され,TPPの意義を再確認したのが2017年3月15日だったから,ほぼ1年で米国抜きのTPPの署名にこぎつけたことになる。2017年5月に交渉が開始されたTPP11は11月に大筋合意に達しており,各国の様々な思惑がある中で短期間に妥結に至ったのはトランプ政権の保護主義への危機意識が共有されたためであろう。

 TPP11(正式名称は包括的及び先進的な環太平洋パートナーシップ協定:CPTPP)は全7条の短い協定であるが,1条に全30章のTPPが組み込まれている。2条が適用を停止する項目(凍結項目)であり,22項目となっている。凍結項目は知的財産章が11で最も多く,WTOのTRIPS協定を超える知的財産の保護の規定(TRIPSプラス)である。凍結項目は途上国などの反対がある中で米国が強く主張しTPPに盛り込んだ規定が大半である。

 関税撤廃など市場アクセスや22項目以外のルール分野では変更はなく,高いレベルの自由化と電子商取引や国有企業など新たなルールを含む高いレベルのルールを持つ「21世紀型FTA」というTPPの特徴はTPP11でも維持されている。

 オバマ大統領が明確に述べたようにTPPの狙いの一つは「中国のような国にルールを書かせない」ことであり,国有企業の規制や電子商取引のルールなど国際ルールと異なる中国独自の政策,慣行,ルールをけん制する規定が盛り込まれている。米国が主導して中国けん制を意図してまとめられたTPPが,1年後にはTPP11として米国の保護主義をけん制する協定になったのだから皮肉なものである。

 TPP11の最終的な目標はFTAAP(アジア太平洋自由貿易地域)の創設である。そのためには早期の発効とともに参加国を拡大することが不可欠である。TPPには韓国,タイ,フィリピン,インドネシアなどが参加意思を表明していたが,現時点ではTPP11への参加意思を表明していない(注)。米国が抜けたことによりTPP11の経済規模は小さくなったことは確かだ。しかし,TPP11の名目GDP10.2兆ドルは英独仏伊の合計10.6兆ドルに匹敵し,人口4.9億人はEUの5.1億人に迫る規模である。TPP11の輸入規模2.3兆ドル(2016年)は,中国の1.5兆ドルやドイツ,フランス,英国の合計額2.2兆ドルを上回っている。TPP11の経済的な魅力は小さくないことと21世紀型FTAとしての意義を説明しアジア太平洋の各国にTPP11への参加を呼び掛けるべきである。

 参加国を増やすために効果が大きいのは米国の復帰である。米国の復帰については,2018年1月下旬にトランプ大統領が「TPPがよいものになればTPPをやる」と復帰を示唆する発言をしているが,「多国間協定または2国間協定」とも発言しており,先行きは不確定である。一方で,米国と農産品輸出で競合するTPP11参加国は米国抜きのほうがメリットが大きいことなど米国の復帰にネガティブな見解が報じられている。TPP11の目的は21世紀型FTAとしてのFTAAPの創設であるという大局観を失わず,米国の復帰を働きかけるべきである。

[注]
  • タイが影響調査を行うとともに全ての利害関係者を集めた会合を開催する(日本経済新聞3月14日付け)

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