世界経済評論IMPACT(世界経済評論インパクト)

No.592

アベノミクス第2ステージついて考える

飯野光浩

(静岡県立大学国際関係学部)

2016.02.15

 安倍晋三首相は,2015年9月24日,記者会見して,「アベノミクスは第2ステージに移る」と宣言して,新たな「3本の矢」を発表した。新たな3本の矢は,(1)希望を生み出す強い経済,(2)夢を紡ぐ子育て支援,(3)安心につながる社会保障である。具体的な目標として,第1の矢「強い経済」の象徴として,2020年にGDP600兆円を掲げた。第2の矢「子育て支援」として,現在1.4程度の出生率を1.8までに回復させることを掲げて,第3の矢「社会保障」として,家族らの介護を理由に退職せざるを得ない「介護離職」をゼロすることを掲げた(2015年9月25日付け「日本経済新聞」朝刊)。

 ここで一度立ち止まって,考えてみたい。2012年12月に,自由民主党(自民党)が政権に復帰して,安倍政権は,3本の矢からなる経済政策,アベノミクスを実施した。第1の矢は大胆な金融緩和,第2の矢は機動的な財政政策,第3の矢が成長戦略である。このアベノミクスの目的は,デフレを脱却して,持続的な民間主導の経済成長を達成することである。この目的の道半ばで,昨年,首相は急遽アベノミクスは第2ステージへ移ると宣言した。経済学,特に開発経済学では,通常,政策や戦略が変更される場合は,それまでの結果を踏まえた政策評価や見直しが行われて,それに基づいて政策や戦略が改善される。つまり,良い点は残して強化し,悪い点は改善するか,もしくは廃止される。このプロセスを経て,政策や戦略はより良くなっていく。しかし,アベノミクスの場合,そのような見直しや政策評価がなくて,いきなり変更されている。これでは,これまでの3本の矢のうち,どこが良くて,どこが悪いのか,分からない。さらに,新3本の矢はこれまでに比べるとかなり抽象的で目標とする対象も幅広くなっている。結果として,アベノミクス第2ステージは総花的であり,何を目指しているのか,何を強調したいのかがぼやけてしまっている。

 経済学,特に開発経済学では,政策や戦略は明確で,目標や対象を絞る方が効果的であると言われている。限りある人的資本や資金を有効に使用するには,目的や対象がはっきりしていることが重要なのである。これを応用すれば,アベノミクスは第2ステージよりも最初の方が望ましい。実際に,Financial Timesの2015年9月28日付けEditorialやThe Economistの2015年10月3日号のように,アベノミクスははじめの3本の矢で一定の効果をあげているので,変更する必要はなく,第3の成長戦略を強化すべきと言う論調もある。

 ここは一度原点に戻る必要がある。政府や政権は科学的な実証研究を実施して,きちんと総括すべきである。今からでもおそくはない。アベノミクスという経済発展戦略について,第1ステージの効果を実証的に検証する必要がある。そのうえで,効果的な「矢」は継続して,効果的でない「矢」は改善もしくは訂正する必要がある。そのような見直しをした上で第2ステージへと移行すべきなのである。

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