世界経済評論IMPACT(世界経済評論インパクト)
コロナ後に財政状況が改善したのか
(独協大学経済学 教授)
2024.07.29
中国政府は7月22日,今年上半期の財政収入と支出のデータを公表した。GDPは前年同期比で5%の成長を実現したものの,一般公共予算収入は115,913億元で,2.8%の減少となった。2020年も前年比で減少したが,2021年~2023年は「ゼロコロナ」にもかかわらず,一般公共予算収入はかろうじて増加を維持した。
中身を見てみると,税収は94,080億元で,5.6%減であったが,非税収入は21,833億元で11.7%の増加となった。収入減の主な要因は税収減である。税収減の中,特に目立つのは国内増値税,企業所得税と個人所得税である。国内経済活動,企業経営状況と個人の所得の現状を反映する税種である。他に,証券取引印紙税は54%も減少した。金額は小さいので,税収全体には大きな影響はないが,株式市場の低迷を物語っている。
中国の財政は一般予算,政府基金予算と国有資本経営予算から構成され,国有資本経営予算は年末に組み入れられるため上半期のデータで公表されないので,状況は分からないが,政府基金予算は,農村送電建設資金,鉄道建設基金,観光発展基金,映画事業発展特別基金など文字通り政府が作った基金の予算である。最大の収入項目は国有土地使用権譲渡収入である。政府基金予算の合計収入は19,915億元で,その内国有土地使用権譲渡収入は15,263億元を占める。減少率は前年同期比18.3%で,2022年と2023年に続く減少である。
一方,一般公共予算支出は136,571億元で,前年同期比2%増である。上期で最大の支出項目では社会保障と雇用支出の22,697億元で,同4.2%増であるった。二番目に大きい支出項目の教育支出は同0.6%増に抑えられた。他に,大きな項目である農林水利支出と都市農村地域支出は同6.8%と8%の増であるが,衛生健康支出は同12.1%減であった。ちなみに債務利息支出も同6.5%増の6,304億元となった。
このように,一般公共予算の支出が収入を上回れば赤字になる。今年上半期の赤字額は20,658億元で,23年上半期の14,690億元と比べ,拡大している。また,23年通年の赤字額は57,790億元で,上半期に比べ,下半期は赤字額が上昇する傾向がある。今年の下半期に更に赤字額が拡大するようであれば,コロナ禍が終息し,経済活動の再拡大による財政収支改善も覚束なくなる。
しかし,そもそもこの望みには無理がある。コロナ禍以前から,財政赤字拡大が大きな流れとなっており,経済成長率の低下は必然であった。2019年から2022年までの一般予算収支赤字額は,それぞれ48,492億元,62,693億元,43,783億元と56,906億元であった。一般予算支出に対する赤字比率は今年上半期の15.1%と2021年の17.7%を除いて,20%を超えておりこの流れは暫く続くであろう。また,最も重要なのは,これは中央政府だけの財政赤字であることを忘れてはいけない。今年の5月に全国の地方政府債務残高は423,838億元にまで達した。
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