世界経済評論IMPACT(世界経済評論インパクト)

No.3279
世界経済評論IMPACT No.3279

経済の好循環と日本の少子化について考える

飯野光浩

(静岡県立大学国際関係学部 講師)

2024.01.29

 地方創生の一環として,その地域の人口の増加を促す政策や対策に注目が集まっている。地方の活性化を目的として,各地方が人口を増やすため,互いに政策や対策を競い合っている状況である。特に,子育て世帯を対象に,金銭的インセンティブに基づいて,医療費や教育費,保育費などに子育てにかかる様々なコストに対して無償やその一部を補助する政策や対策について,各自治体は懸命にアピールしている。

 このような現状は,各自治体が子育て支援を切磋琢磨して,よりよりものにしようとする努力を促す意味では望ましいかもしれない。しかし,現在の日本は少子化で,人口も減少している中では,これらの政策や対策は人口の奪い合いを促している。つまり,大きな財源を持つ自治体は補助金を充実できるため,多くの人々が流入する。しかし,財源をもたない小さな自治体からは,必然的に人口が流出する。つまり,今の状態はゼロ・サムゲームである。したがって,この状態のままでは,日本全体で見ると地域の人口の格差が広がり,二極化がさらに進むことになる。

 このようなパイの奪い合いの状況から脱出するためには,パイを大きくするしかない。人口を増やす,つまり子どもの数を増やしていく必要がある。日本では婚外子に法律的にも社会的にも厳しい現状を踏まえると,子どもの数を増やすためには,婚姻数を増やす必要がある。現在,日本の婚姻数は少なく低下傾向にあり,かつ初婚年齢は上昇している。その要因の一つが経済的要因である。つまり,所得が低いために,結婚の意思があるのにできない。かつ,ある程度資金を貯めてから結婚するため,初婚年齢が上がる。したがって,この流れを反転させるには,停滞する日本経済を成長軌道に乗せて,所得を上昇させる必要がある。現在の岸田政権が推し進めている物価と賃金の好循環による経済回復は,その点でも重要である。この好循環が所得の増加をもたらせば,婚姻数の低下傾向に歯止めがかかる。しかし,この低下傾向を止めて,上昇させるには,この経済の好循環が持続的になる必要がある。この持続的な好循環には,経済界への指導など政府の政策推進力に依存するが,しかし,現在の自民党の派閥資金パーティーを巡る事件で,その力はかなり落ちている。その点が気がかりである。

 とにもかくにも,経済の好循環は日本の長年の宿願であるデフレ脱却のみならず,少子化にもプラスの影響を及ぼす。

(URL:http://www.world-economic-review.jp/impact/article3279.html)

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