世界経済評論IMPACT(世界経済評論インパクト)

No.2123
世界経済評論IMPACT No.2123

鍵を握る再生エネルギーコスト低減:温室効果ガス・実質ゼロへの課題

三輪晴治

(エアノス・ジャパン 代表取締役)

2021.04.19

 現在のエネルギーのコストはほぼ次のようなものになっている。

 「水力発電」のコストは7.5円/kWh。「火力発電」は9円/kWh。「太陽光発電」は10円/kWh。「風力発電」は10円/kWh。「原子力発電」のコストは6.6円/kWhと言っていたが,原子力発電装置にかかるいろいろのコストを入れると18円/kWhになると言われている。「水素発電コスト」は17円/kWh。これには水素発電社会のインフラの構築コストが膨大なものになる。

 日本産業の競争力強化のためにもエネルギーコストは低くなければならない。これからのエネルギーコストは,現在の水力発電のコスト(7円/kWh)以下にする必要がある。

 現在のコストを国際比較すると,日本の現在のコストは他の国に比べて大変高い。

  • [発電コスト(MWh)]
  • 太陽光発電  アメリカ   イギリス   ドイツ    日 本
  •        $67/MWh  $94/MWh  $78/MWh  $161/MWh
  • 風力発電   アメリカ   イギリス   ドイツ    日 本
  •        $51/MWh  $70/MWh  $63/MWh  $144/MWh
  • [資本費(設備費+工事費)]
  • 太陽光発電  アメリカ   イギリス   ドイツ    日 本
  •        $1,120/MW $990/MW  $950/MW  $2,490/MW
  • 風力発電   アメリカ   イギリス   ドイツ    日 本
  •        $1,700/MW $1,700/MW $1,680/MW $2,780/MW

温室効果ガス・ゼロのための新しいエネルギー・技術

水素発電

 「温室効果ガス・実質ゼロ」のための最も可能性があるエネルギーは今のところ「水素エネルギー」であろう。二酸化炭素を出さないためには「太陽光発電エネルギー」,「風力発電エネルギー」や「原子力発電のエネルギー」を使って水素ガスをつくることになる。水素は宇宙全体の物質の70%を占め,豊富に存在する。水素ガスを使って電気生成するとき二酸化炭素やそのたの排気ガスを出さず,水だけを排出する。この理由で,諸外国は既に水素エネルギーに照準を当てている。

 しかし水素は「化石燃料」の一種である。地上や地中は酸素が支配している世界だから,水素は単独では存在しない。酸素と結合した安定な水や岩石や生物の中に存在する。水素ガスを手に入れるには,あるエネルギーを使って還元操作で水素ガスをつくらなければならない。つまり電気により水を電気分解したり,メタンと水を高温で加熱反応して水素ガスをつくることになる。水素ガスを製造する段階で,化石燃料を利用すれば二酸化炭素が排出されてしまうので,二酸化炭素の排出ゼロ化にはならない。水素ガスは水を電気分解してつくるが,それには「太陽光発電」,「風力発電」や「原子力発電」のような再生可能エネルギーを使わなければならない。現在の水素発電技術はまだ効率が悪く,発電コストが高い。これを大幅に改良しなければ広くは使えない。

太陽光発電装置

 太陽光発電の技術は日本が開発したものである。しかし中国は国家戦略で太陽光発電技術を開発・生産し,今では世界を支配している。中国は国内で強制的にこの設備を設置させて量産効果を追求し,コストを下げ,これはビジネスになると確信を得た。生産をどんどん拡大し,中国のロンジソーラー社などがこの世界市場を牛耳っている。日本には企業用の太陽光発電機器は殆ど中国製の装置が使用されている。

風力発電

 日本はこの風力発電技術の開発を早くから始めたが,日本には適切な風速のある場所が少なく,また風力発電機の騒音と電気ノイズで普及が進まなかった。特に日本は洋上風力の適切な場所が少ない。そのため現在ではドイツがこの風力発電機器の生産を牛耳っている。中国もドイツを追いかけている。ヨーロッパ,中国では風速のある場所があり,有力発電が急速に普及している。

原子力発電

 原子力発電は,正力松太郎が,これを取り上げて首相になってやろうとして日本に導入された。そのためにアメリカの原子力発電装置をそのまま輸入して使用された。しかし地震や津波の少ないアメリカの原子力発電装置であったために,配管構造部分が日本のような地震では亀裂が入ったり,津波で電源部分が水に浸かると動かなくなるという問題があった。これが東日本大震災で明らかになった。事故とその処理コストや核燃料後処理のコストを入れると,現在の原子力発電装置による電気のコストは安くない。

 原子力発電を使うには地震大国の日本でも使える安全性の高い構造にしなければならない。トリウム溶融塩原子力発電(個体燃料棒ではなく溶融塩であるからコントロールしやすいし,メルトダウンしないものである)にすべきである。ロシヤやアメリカで開発されている。

電池技術

 電気エネルギーの問題は電気を蓄積する電池の技術が必須になる。電気エネルギーの生産と消費をコントロールするには電気エネルギーを一時蓄える電池が必要である。電池技術の主流になっているリチュームイオン電池技術は日本が開発し,商品化したものである。この技術で日本の吉野博士(旭化成)がノーベル賞を受賞している。しかし今日実際の産業としてのリチュウムイオン電池の製造は韓国,中国に支配されている。現在のリチュームイオン電池には安全性や容量や劣化の問題があり,また急速チャージ,急速ディスチャージに弱点がある。新しい電池の技術を開発しなければならない。

 日本は先端技術の開発には早く手を付けるのであるが,商品として世界市場で展開する力がないために,殆どの場合日本製品は主流になれず,すぐ他国に牛耳られてしまう。日本市場だけを対象にして商品を開発しては成功しない。そして重要な商品・産業であれば,国家戦略を立て,世界に供給できるようなものにしなければならない。

(URL:http://www.world-economic-review.jp/impact/article2123.html)

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