世界経済評論IMPACT(世界経済評論インパクト)
新型コロナウィルスの感染拡大を受けた学校一斉休校について考える
(静岡県立大学国際関係学部 講師)
2020.07.06
新型コロナウィルスの出現と世界的な感染拡大は,日本と世界の経済社会に大きな転換をもたらした。日本において,全国的な感染拡大がいったん収まり小康状態となり,東京などの首都圏を中心に局所的な感染拡大に落ちついてきた。いわゆる,コロナウィルスの感染拡大の第1波が過ぎたように見える今(2020年7月初め),新型コロナウィルスの感染防止策として採用された全国一斉の学校閉鎖について考えてみたい。それは,新聞,テレビなどのマスコミなどでは,今後の日本経済の発展に決定的に重要な人的資本の蓄積に欠かせない教育に関する報道がほとんど見かけないからである。マスコミは連日,コロナウィルス対策で休業要請された事業や施設が営業を再開して,今後の経済に与える影響を中心に報道している。
全国一斉の学校閉鎖の経緯を簡単にふり返る。日本経済新聞によると,安倍晋三首相は2月27日のコロナウィルス感染症対策本部で,全国の小中学校と高校,特別支援学校に臨時休校を要請する考えを表明した。3月2日から春休みの期間で実施を求めた。実際に休校するかは,学校や地方自治体の判断となる。その日の表明では,幼稚園や保育園は対象外としたが,その後の全国的な感染拡大を受け,休校要請は,保育園や幼稚園にも及んだ。さらに,政府が全国に緊急事態宣言を出したことにより,学校の休校はさらに延長された。その後,感染拡大が落ち着き,緊急事態宣言が解除されてから,休校は段階的に解除されて,6月に入ってから正常化していった。
これまでの経緯を簡単にふり返ったが,この間,日本のマスコミは休業要請による経済的影響を中心に連日報道しているが,この一斉休校による社会経済的コストや今後の子どもへの影響を懸念する論調はほとんどない。日本より,感染者数や死亡者数が圧倒的に多いイギリスでは,感染拡大の最中においても,Financial TimesやThe Economistが学校閉鎖の社会経済的コストは高く,インフルエンザと異なり子どもが感染を広げるスーパースプレッダーにはならないので,学校を再開すべきであると報じていた。
ここから見えてくるのは,日本社会全体としての教育に対する意識というか熱量の少なさである。日本では少子化が叫ばれ,子どもは大切であるといいながら,子どもの将来のことや教育について心配する声はあまり聞こえてこない。かつても日本は教育への熱量が多い時期,特に戦後の経済発展期にはあったと思うが,いつの間にか消えてしまったように感じてしまう今日この頃である。
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