世界経済評論IMPACT(世界経済評論インパクト)

No.1517

インドネシア外資の参入の困難さからみる今後の展望

川島 哲

(金沢星稜大学経済学部 教授)

2019.10.28

 インドネシアジャカルタへ9月に訪れた。

 そこで実感したのが,人件費の高騰と外資の参入を妨げている各種の法律である。

 これらは日系企業の大きな問題となっている。

 日本貿易振興機構(ジェトロ)の2018年「2018年度アジア・オセアニア進出日系企業実態調査」におけるインドネシアでの経営上の問題点として,日系企業が最上位にあげているのが,従業員の賃金上昇である。2017年,2018年と2年連続で断トツのトップである。

 その背景には,人件費の高騰がある。

 三菱UFJ銀行ジャカルタ支店の調べでは,ジャカルタ首都特別区の2019年の法定最低賃金は,前年比8.03%増の394万973ルピアとなった。ジャカルタ近隣のブカシ県は,さらに高く414万6,126ルピアとなっている(注1)。

 インドネシアでは,2015年に政府が賃金に関しての政令を出し,最低賃金上昇率を経済成長率に消費者物価上昇率を足した数字とすることを規定している(注2)。

 2019年もこれに基づいて計算すると,経済成長率5.15%に消費者物価上昇率2.88%を足し合わせた8.03%を軸に最低賃金が決定されていく。

 人材確保においても三菱UFJ銀行ジャカルタ支店によれば,職種ごとにみてみると,人材確保のハードルが高い順にあげれば営業は最も人材が不足している。それに次ぐ人事総務は労働法(2003年『労働法2003年第13号』)により外国人が就けない分野である。経理もスキルを要しているため日本語スキルとの双方を兼ね備えた人材は少ない。

 比較的人材が豊富なのが生産である。これは多くの雇用を生むという理由が大きい。

 業種でみても製造業は原則外資100%可能であるが,商業分野などは外資規制がある。

 金融機関においては,日系100%の支店においての日本人比率は減る一方であり,就労ビザも出にくい状況がつづいている。進出形態は,「現地法人」か「駐在員事務所」のどちらかであり,「支店」という形態は認められないためである。

 このような輸入規制があり日本企業を苦しめている。

 それに加え,仮に日本の中小企業がインドネシアへ直接投資を行おうとしても,本国側の規模の大小にかかわらず,インドネシア国内では日本の大企業と同じ扱いとなる。

 つまり,大小にかかわらず外資は大企業扱いである(投資調整庁の運用では,払込資本金25億ルピア超で外資企業の設立可能である(注3))。

 今後,インドネシアが変貌するためには,このような各種法律法令をいかに改正していくかが大きなカギを握ると感じている。

 このIMPACTサイトでも筆者が何度か取り上げているが,これらのソフトインフラに今後も注目していきたい。

[注]
  • (1)三菱UFJ銀行ジャカルタ支店アジア・オセアニア営業部,国際業務部『インドネシアの投資環境及び日系企業の動向』2019年8月。
  • (2)ジェトロ「ビジネス短信」2015年12月21日参照(2019年10月21日アクセス)。
  • (3)日本貿易振興機構(ジェトロ)ジャカルタ事務所「インドネシア経済・政治概況」2019年9月。

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川島 哲

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