世界経済評論IMPACT(世界経済評論インパクト)

No.1460

平成「失敗の博物館」に令和ニッポンの青写真は描けるか?

市川周

(白馬会議運営委員会 事務局代表)

2019.08.26

 令和の始まりはどことなく明るいムードが漂っていた。しかし,新しい時代をどう切り拓くか明確なビジョンが示されているわけではない。「失敗の博物館」と揶揄されるような平成時代の負の連鎖を如何に断ち切るか。11月23−24日開催の第12回白馬会議では内向きの反省論議を越えて令和ニッポンの青写真づくりに挑戦する。

 先ず第1セションの「“第4の波”にどう立ち向かうか?——ブロックチェーン革命とサイバーセキュリティ」では松田学氏(松田政策研究所代表)が,ブロックチェーン革命が「ビットコイン」のような投資取引だけの話に留まらず,第1の波(農業),第2の波(工業),第3の波(情報)に続く“第4の波”として,電脳空間に大組織型中央管理システムから自立した分散社会型の新しいコミュニティを形成すると提起する。但し,電脳空間に向き合う人間のリスクも複雑化深刻化し,サイバーセキュリティの実践と錬磨が問われる。財務省官僚,衆議院議員,東大客員教授,ベンチャー経営者と八面六臂の活躍を重ねてきた松田氏が“第4の波”にどう立ち向かうかを問う。最近著:『いま知っておきたい「みらいのお金」の話』『サイバーセキュリティと仮想通貨が日本を救う』等。

 第2セッションの「行政とどう向き合うか?——忖度化する霞ヶ関と弱肉強食化する自治体間競争」では,金井利之氏(東京大学大学院法学政治学研究科教授)が,「過大な期待もしなければ,安易に諦観もしない,というのが行政とのつきあい方」とクールな視線を保とうしながら,この国の行政に対する被治者たる国民としての憤懣と危機感を露わにする。政権が意に沿う官僚を政治任用すれば,組織全体がドミノ倒し的に忖度する。「地方創生」では消滅の恐怖にさらされる自治体同士で移住者を奪い合い,「ふるさと納税」の名のもと限られた地方財源を奪い合う。ではどうするか?金井氏は明治維新以来の官僚政治さらに平成の政治主導型行政改革を克服するための大胆提言を試みる。最近著:『行政学講義-日本官僚制を解剖する』『地方創生の正体』等。

 第3セッションの「米中超大国間でどうバランスをとるか?——日本外交模索の先」では,川島真氏(東京大学大学院総合文化研究科教授)が格闘する。6月開催のG20大阪サミット特別会合では米中首脳に左右脇を固められ座っていた安倍首相がなんとも窮屈そうであった。この2つの超大国と日本はどうつきあうか? 米中が激烈な覇権競争に突入していく中で日本の対米傾斜路線が揺らいでいる。日本の同盟コストに不満を持つトランプ大統領は日米安保体制への異議申し立てを強める。一方,あと10年もすれば米国GDPを追い抜くだろう中国の「一帯一路」型グローバリズムの日本に対する風圧は高まっていく。ではどうするか? 日本外交模索の先を問う。最近著:『21世紀の「中華」——習近平中国と東アジア』『中国のフロンティア——揺れ動く境界から考える』等。

 第4セッションの「若者はどう未来をつかもうとしているのか?——世代間ギャップを越えて」では,西田亮介氏(東京工業大学リベラルアーツ研究教育院准教授)が平成の初めから15年間程の間に生まれた「日本の若者」に迫る。彼らと昭和生まれの「大人」世代との異質性は深刻だ。「なぜ若者を理解できないのか,なぜ年長者を許せないのか」と不寛容に満ちた叫びが聞えてくる。一方,「自民党はベストじゃないが,これはこれでベター」という若者らしからぬ声(?)も増えている。彼らは令和の時代にどんな未来をつかもうとしているのか。若者たちに近いところでこの問題に体当たりしている36歳の若手社会学者西田氏(白馬会議歴代講師最年少!)に語って貰う。最近著:『不寛容の本質』『「言葉」で読み解く平成政治史』等。

 今から11年前,リーマンショックの年に「西のダボス,東の白馬」の勇ましいかけ声の下に始まった白馬会議だが,もうダボス会議をパクるなんてことは止めた。白馬会議はひたすら「日本の未来」を見つめ続ける「知的個人」の集いを重ねる中で,令和ニッポンをつくって行く。

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