世界経済評論IMPACT(世界経済評論インパクト)

No.1170

中日の第3国での民間経済連携について

唱 新

(福井県立大学 教授)

2018.10.01

 最近,中国の「一帯一路」構想に合わせて,中日企業の第3国での連携強化が話題となっている。日本の経済界では強い関心を持っているが,日本社会全体では賛否両論で,警戒感もくすぶっている。しかし,その実際の進展状況に目を転じると,9月25日に中日両政府は北京で,「第3国での経済協力を推進する官民合同委員会」の初会合を開催し,安倍首相訪中時,官民合同の「日中第3国市場協力フォーラム」の開催や具体的な協力プロジェクトへの署名に向けて,官民の実務界は動き出している。中日両国の補完関係からみれば,第3国での中日連携は日本企業にとって,アジアの市場を開拓する好機になるかもしれない。

 これまでに中日の政治関係が悪化したにもかかわらず,東アジアのサプライチェーンにおける中日企業の連携がかなり進んでいる。その中で,日本企業はASEANに進出する中国系企業への中間財供給を行うケースもあり,かつて,中国に進出する日本企業は現地の中国企業と連携でASEANに進出するケースもある。すなわち,中国と日本の間,政治関係はよくなったり,悪くなったりしてはいたが,企業ベースの協力関係は幅広い分野で進展しつつある。現在のアジアでのインフラ整備への巨大な需要からみて,中日企業連携のポテンシャルは大きいと言わざるを得ない。

 さらにトランプの保護主義政策により,世界経済秩序が揺らいでいる中で,世界の成長センターといわれるアジアでは新たな経済秩序の構築は重要な課題となっている。その中で,経済規模の大きい中国と市場経済システムや社会制度が高度に整備されている日本との連携は鍵となっている。そのために,サプライチェーンを超えて,第3国におけるより多くの分野での中日協力の強化は不可欠となっているといえよう。

 中日の第3国での連携に関しては,開発金融,省エネ・環境,新エネルギー開発など,幅広い分野を想定できるが,その中で,特に国際物流システム整備における協力は実現可能性が大きいと見込まれている。その国際物流システムの整備に関しては,中国の「一帯一路」政策に合わせて,メコン河流域のインフラ整備や通関手続きの簡素化,東アジア海上物流及び「中欧班列」やユーラシア海陸一貫輸送ルートの高度化と効率化を推進するためには中国と日本,さらに韓国を加えた,国際協力体制の構築は不可欠であり,このことはアジア経済圏の形成及びアジア秩序の構築にとって,追い風になるといえよう。

 中国の「一帯一路」政策は始まってから5年に過ぎず,頓挫した案件も少なくなく,いまは試行錯誤をしながら,模索しつつある段階にある。こうした中で,数が少ないものの,中日企業協力の実績も存在している。今後,中日の協力はアジアのインフラ整備のプロジェクトを始動させるためには,真に現地のニーズに沿った中長期的な貢献を行うことを前提に,グローバルスタンダードに則った,透明性,開放性,経済性,採算性等を充足する持続可能性の高いプロジェクトの組成・運営が要であり,そのためには中日双方による共同研究体制の構築と,両国企業が協働できるプロジェクト候補に関する情報交換が必要不可欠となっている。

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