世界経済評論IMPACT(世界経済評論インパクト)
米国の雇用鈍化は続くが1月利下げは見送りへ
(元野村アセットマネジメント チーフストラテジスト)
2026.01.19
12月の失業率は低下
1月9日に発表された2025年12月分米国雇用統計の家計調査によれば,失業率は4.4%と11月の4.5%(改定後)から低下しました。ただ,失業率は2023年4月の3.4%を底に緩やかな上昇基調にあります。一方,労働参加率(=労働力人口/16歳以上人口)は2023年8月の62.78%をピークにして細かい上下動を繰り返しながらも緩やかな低下基調にあり,2025年12月には62.40%と11月の62.46%から若干低下しています。失業者とは仕事に就いていないものの,仕事をする意志を持って職探しをしている人を指します。希望する仕事が見つからず,職探しをあきらめた人は,労働力人口から外れることになり,そうした人が増えると,労働力化率は低下します。緩やかな失業率の上昇と労働参加率の頭打ちは,米国の景気拡大期の終盤に見られるパターンであり,景気後退が近づいていることを示唆しているようです。
賃金総額の緩やかな鈍化
雇用統計の事業所調査の方では,非農業部門就業者数は,12月には前月比5万人増と事前の市場予想に近いものとなりました。ただ,10,11月分は下方修正されています。特に10月に政府閉鎖の影響で前月比17.3万人減となった後,11月は5.6万人増に留まり,12月分と合わせても10月の減少分を取り戻せていないことは,雇用の基調の弱さを物語っています。
民間非農業部門の就業者数×平均労働時間×時間当たり賃金で算出される賃金総額は,雇用・賃金動向を総合的に示す指標であり,名目GDPと強い相関を持っています。民間非農業部門賃金総額の前年同月増加率は,2022年12月には+7.2%であったものが,23年12月には+5.6%,24年12月には+4.6%へと下がりました。25年12月には+4.3%と11月の+4.4%を下回り,鈍化基調が続いています。
根強い消費者のインフレ懸念
一方,同じく1月9日に発表されたミシガン大学消費者調査1月分速報によれば,消費者の1年先までの期待インフレ率は+4.2%と12月から横這いとなり,5年先までの期待インフレ率は年率+3.4%と12月の+3.2%から上昇しました。2024年12月には1年先期待インフレ率が+2.8%,5年先が+3.0%であったものが,トランプ関税発動をきっかけに急上昇し,1年先期待インフレ率は2025年5月に+6.6%,5年先は25年4月に+4.4%に達しました。その後,徐々に低下してきましたが,依然トランプ関税発動前の水準を上回っています。
13日に発表された12月分消費者物価は,食品,エネルギーを除くコア・ベースで前月比+0.2%,前年同月比は+2.6%となり,11月の+2.6%から横這いとなりました。
失業率が一旦低下したことと,消費者のインフレ懸念が根強いことから,1月27,28日のFOMCでは利下げは見送りとなる公算が高まっています。ただ,雇用が鈍化基調にあることには変わりはなく,Fedが金融政策を運営する上で悩ましい状況が続くでしょう。
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