世界経済評論IMPACT(世界経済評論インパクト)

No.1717
世界経済評論IMPACT No.1717

ASEANのコロナウイルス感染動向(3):シンガポールが倍増,ベトナムとタイは収束の兆し

石川幸一

(亜細亜大学 特別研究員)

2020.04.27

 ASEANのコロナウイルス感染者は4月20日時点発表(集計は19日)の2万8243人,死者は1144人から27日発表(集計は26日)の3万9472人,死者1411人に増加した(注1)。シンガポールの感染者が倍増しシンガポールで13624人となった。ASEANの増加の65%をシンガポールが占めている。ただし,シンガポールの死者は12人と極めて少ない。死者が最も多いのはインドネシアで743人である。致死率はインドネシアが8.4%と最も高くフィリピンが6.6%である。

 ベトナムは感染者数268人,死者ゼロコロナ対策が最も効果をあげている。感染者数が少ない要因として検査件数が少ないことがあげられるが,ベトナムの4月26日時点の累計検査件数は21万2965件,100万人当たり検査件数は2188件で日本(1179件)のほぼ倍である。100万人当たりの死者数はベルギー612人,スペイン496人など欧州と比べると,ASEAN各国は少なく,ベトナム0人,タイ0.7人,シンガポール,マレーシアは3人である。

 ベトナムは4月3日以降感染者が一桁あるいはゼロとなっており,タイも4月21日以降10人台と収束しつつあり,マレーシアも減少傾向である。

 なお,ラオスとミャンマーは公表されている以上の感染者がいると推測される。各国の状況は次のとおりであり,感染防止に向けて厳しい規制が実施されている(注2)。

 コロナ対策は,台湾(感染者429人,死者6人,100万人当たり死者0.3人),韓国(感染者1万738人,死者243人,100万人当たり5人)が成功例として賞賛されている。また,日本ではドイツ(感染者15万7770人,死者5976人,100万人当たり死者71人),スウェーデン(感染者1万8640人,死者2194人,100万当たり死者217人)が注目されているが,ベトナム,タイなどASEANのコロナ対策も注目すべきであろう。また,中国,韓国,台湾に続き,ASEANが収束して行けば,アジアが世界経済の回復を主導することが期待できる。

ブルネイは,3月10日にマレーシアからの帰国者の感染を確認した。4月26日の感染者は138人,死者は1人,100万人当たりの死者は2人,検査件数は1万2981件,100万人当たりの検査件数は2万9672件である。自国民およびが外国人の海外渡航を禁止している。

カンボジアは,1月27日にメコン川の観光クルーズで3名の英国人の感染者がみつかった。4月26日の感染者は122人,死者は0人である。検査件数は5768件である。政府は,シェムリアップの人気観光スポット,全国のカジノを封鎖し,首都プノンペンの学校を閉鎖した。

インドネシアは,3月2日に初めて感染者が確認された。長期間感染者ゼロだったが,4月26日には感染者8882人,死者743人に増加した。致死率は8.4%である。検査件数は7万2099件,100万人当たり264件である。首都ジャカルタで多くの感染者が見つかり,首都は3月20日から非常事態宣言下にある(4月19日まで)。ジャカルタの選手村が病院(2万2000人収容)に転用されている。4月2日から外国人の入国は禁止されている。

ラオスは,中国との国境封鎖とフライトの停止などの対応を取っていたが,3月24日に2名(ホテル従業員と観光ガイド)の感染が確認された。4月26日時点で19人となっている。検査件数は1735件である。3月30日から4月19日まで外出禁止,公務員の出勤禁止,食品・医薬品を除く工場の操業停止,出入国禁止など厳しい規制が実施されている。米国はラオスに感染防止のための装備機器などの供与を行った。

マレーシアは,1月25日に感染者が確認された。4月26日の感染者は5780人,死者は98人である。検査件数は13万1491件,100万人当たりの件数は4013件である。2月27日から3月1日に行われたクアラルンプール郊外での1万6000人規模の宗教行事参加者から多数の感染者が確認されている。3月18日から4月28日まで,全国での移動制限が実施されている。集会の禁止,宗教施設・事業所閉鎖,全教育機関の閉鎖,外国人の入国禁止など厳しい規制が実施されている。4月15日以降感染者確認数は100人を切っており,26日は38人だった。

ミャンマーでは,3月23日に米国および英国からの帰国者2名(ミャンマー人)の感染が確認され,4月26日時点で感染者146人,死者5人である。検査件数は6676件,100万人当たりの件数は123件である。中国からの入国ビザに続き,3月29日から全ての国に対し入国ビザ発給が停止され,3月30日から国際便の着陸が認められていない。

フィリピンは,1月30日に最初の感染者が確認され,4月26日時点で7569人,死者501人となっている。検査件数は8万4789件,100万人当たり件数は774である。ルソン地域は3月17日から4月14日まで封鎖され,往来が禁止されていたが,30日まで延長された。外出は食品,薬品および生存に必要な物資購入を除き規制されている。入国ビザ発給停止,米国との軍事訓練の中止などが発表された。

シンガポールは,1月23日に感染者が確認された。隔離命令に従わないと1万シンガポールドル(約70万円)か6か月以下の禁固もしくはその両方という厳しい規制を行っている。感染者数は4月20日の7365人から26日には1万3624人に増加している。死者は12人と極めて少ない。外国人労働者の感染が増加していると報じられている。検査件数は12万1224件,100万人当たり2万815件とアジアでは際立って多く欧米並みである。4月7日から5月4日まで生活に必要なサービスを除く職場を封鎖した。

タイは,1月13日に感染者が確認された。4月26日の感染者は2922人,死者は51人である。3月26日から4月30日まで非常事態措置(午後10時~午前4時夜間外出禁止令)が実施されている。4月11日以降感染者発生数は50人を切り,21日以降は10人台だった。25日は53人に増加したが26日は15人に減少している。バンコクでは,レストラン,マーケット,学校,理髪店,スポーツスタジアム,ゴルフコース,マッサージ店などが閉鎖されている。開店が認められているのは,持ち帰りレストラン,スーパーマーケット,薬局,食品マーケットである。マレーシア,ラオス(Nakhon Panam),カンボジア(Sa Kaeo)との国境(陸路)が閉鎖されている。労働許可証をもたない外国人の入国は禁止である。

ベトナムは,1月23日に感染者が確認された。4月26日の感染者数は270人,死者はゼロである。4月3日以降感染者発生数は一桁であり,16日から23日はゼロだった。ベトナム航空の国際線運航の停止,インバウンドフライトの停止,ホーチミン市で30名以上規模のレストラン閉鎖などの感染防止策を実施していたが,3月30日に全土のパンデミック宣言を首相が行い,4月1日から22日まで不要不急の外出禁止(主要都市)となっており,23日に外出禁止を原則解除した。4月8日,9日にダナンで開催予定のASEAN首脳会議は6月に延期された。

[注]
  • (1)感染者数は,ジョン・ホプキンス大学による。
  • (2)各国の状況は,ASEAN Biodiaspora Virtual Centre(ABVC), “Risk Assessment for International Dissemination of COVID-19 to the ASEAN Region” April 15, 2020.などによる。最新状況については,ジェトロ情報を参照。緊急経済対策は日本アセアンセンターホームページに掲載されている。
(URL:http://www.world-economic-review.jp/impact/article1717.html)

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