世界経済評論IMPACT(世界経済評論インパクト)

No.1502

Uber VS Lyft ——カナダ・トロントで考える

伊田昌弘

(阪南大学 教授・オンタリオ工科大学 特別研究員)

2019.10.07

 筆者は本年(2019年)4月から1年間の在外研究の機会に恵まれ,カナダのトロントで暮らしている。トロントで驚いたのは,スマホの配車アプリであるUberとLyftが大きく普及しており,そして後発であるLyftが予想外に伸張していることであった。

 ライドシェアのUberについてご存じの方は既に多いと思われるが,Lyftという会社はご存じだろうか? LyftはUberより遅れること3年,2012年Uberと同じ米国カリフォルニアで誕生した会社で,2018年3月にトロントでもサービスを開始している。Uberが2019年現在で70か国に展開しているのに比して,Lyftは米国以外カナダだけで営業している。

 このプラットフォーム(スマホ用)は,両社とも同じようなもので,以下の通りである。①まず,目的地を入力する。②迎えに来てもらう場所を地図上で選択,もしくは入力する。③価格・サービスの違いを考慮して,車種を選択する。この時に,価格とドライバーの名前と評価,おおよその到着時間がわかる。④ドライバーが受け入れてくれるのを確認した後,ピックアップ場所に向かう。トロントでは,待ち時間は1~5分くらいである。⑤目的地に到着した後,ドライバーを5段階で評価する。支払いはクレジットカードなので,キャッシュレスであり,そのまま降車できる。道路が混んでいても料金は最初の提示のまま同じである。見知らぬ土地で遠回りされることもない。ちなみにトロントの玄関であるユニオン駅から空港までタクシーだと66~70ドルがUberやLyftだと39~40ドルで文句なしに安い。これでは,タクシーを使う者がいなくなってしまう。配車プラットフォームを経営する両社は,収入の約7割をドライバーに渡し,残りを自社の売上として計上する。

 ところで,ネットの社会,特にプラットフォームの世界では,GAFAを想起すればわかるように,これまで先発で進んだ会社は,起業後すぐに国際的な巨大化をし,「Winer takes all」という「一人勝ち」の現象が起こることが常識だった。旧時代の他社を蹴散らし,その後,後発で優れた会社が登場しても,評判が評判を呼ぶ「ネットワーク外部性」という機能が働くとして,これらの現象を説明してきた。

 しかし,今,北米(米国とカナダ)で起こっていることは,後発のLyftが,Uberを追いかけ,市場を席捲しているのである。Lyftによれば,2018年に全米でシェア30%強を奪取し,いくつかの都市ではトップであるという。2019年には40%に迫る勢いというCNBCやロイターの報道もある。Lyftの場合,その急激な伸張は,米国とカナダに特化し,徹底したプロモート作戦に起因すると考えられる。トロントで私が体感しているのもこうした事実である。初回インストール時にはLyftのプロモーションコードを入力しただけで,50ドル(=10ドル×5回分)分を私はゲットした。私の場合,1回当たり利用(乗車)料はトロントで平均とされる12~13ドルであるから,これはかなりお得であった。スマホのアプリもすこぶる使いやすい。こうして客の多くがUberからLyftに流れを変えると,ドライバーは必然的に両方に対応すべく行動する。事実,トロントの地元紙「The Star」(2019年7月18日付)によれば,トロントで登録しているライドシェアのドライバー数は実に9万人以上となっており(ちなみにトロントの人口は約600万人),いかに多くの人が「小遣い稼ぎ」にドライバー登録しているかに驚くが,同時に各種調査の結果では,ドライバーの8割までがUberとLyftの両方に登録しているという。

 世界展開を加速させるUberと北米限定でシェアを上げていくLyft。この両社の今後の展開に目が離せない。

関連記事

伊田昌弘

国際ビジネス

アングロアメリカ

最新のコラム