世界経済評論IMPACT(世界経済評論インパクト)

No.1496

赤字ユニコーン企業——UberとLyftを考える

伊田昌弘

(阪南大学 教授・オンタリオ工科大学 特別研究員)

2019.09.30

 配車アプリを世界70か国に展開するUberに対して,北米ではLyftが後発で登場し,北米(米国とカナダ)にけるライドシェアの占有率を30~40%へと急激に伸ばしていることについて,世界経済評論インパクトの別稿で述べた。ところで,UberとLyftは共に赤字であり,この問題について考えてみたい。

 想定時価評価額10億ドル以上,創業10年以内のデジタル未上場企業を「ユニコーン企業」と呼ぶ。GAFAはいずれもユニコーンだった。そして,本年(2019年),ユニコーンである2社,すなわち,3月にLyftが,4月にUberが相次いで上場を果たした。Lyftの場合は,Uberよりも後発であるにもかかわらず,先に上場したわけであるが,9月25日現在で時価総額は122億ドルとなっており,ユニコーン企業の面目躍如といった感がある。一方,Uberの方は,9月同時点での時価総額は539億ドルであり,Lyftよりもかなり大きく,これは同日時点でのGM(529億ドル),Ford(366億ドル)よりも大きいことにまず驚く。20世紀に「自動車の時代」を作り上げ,世界に名を馳せた名門のGM,Fordを思い起こす時,21世紀のデジタル企業の勃興は感慨深い。

 ところで,eビジネスのご多分に漏れず,この両社はいずれも赤字である。本年8月に発表された第2四半期の業績によると,Lyftは,売上8.7億ドルで前年同期比72%の急成長を遂げている反面,6.4億ドルもの赤字を計上している。確認できる2017年第1四半期以降,黒字は一度もない。また,Uberの方も,同じ第2四半期の業績で,売上31.9億ドルに対して,52億ドルの赤字となっており,売上は過去最高だが,赤字も過去最高となっている。こちらも業績が確認できる17年第1四半期以降,10四半期連続で赤字である。

 赤字企業なのに,何故ユニコーンであったのか,上場後も時価総額が10億ドルをはるかに越える水準でいられるのか?

 この疑問を解くカギとして,両者の株主をみると興味深いことがわかる。意外なことに日本とのつながりが深いという事実に辿り着く。株主構成では,Uberの筆頭株主がソフトバンクであり,トヨタが提携出資している。一方,Lyftの筆頭株主は楽天であり,これまた自動車製造業のGMが提携出資しているのである。日本のデジタル企業を代表するソフトバンクと楽天,そして世界の自動車企業を代表するトヨタとGMが見事にUberとLyftという2つの陣営に分かれて相対しているのである。

 これは何を意味するのであろうか? それは,現在の両社の先にあるもの,未来における自動車産業とシャアリングエコノミーの時代展望であり,先陣争いの投資である。具体的にはフードデリバリーへの多角化,自動運転技術の実用化とアプリ開発,システムの先行投資,そしてプロモーション費用に大きな比重がかけられているという事実から赤字を説明できる。

 赤字の高株価企業であるメルカリ(詳しくは吉原英樹:世界経済評論インパクトNo.1378 2019.06.10参照)の場合もそうだが,UberやLyftといった配車アプリの場合も,資本主義といったシステムから誕生した企業であり,赤字でも意外なことに市場から大きな評価を受けている。これらに共通するのは,財・サービスを共有することで成立する「シェアリングエコノミー」という概念である。所有=私的占有といった古典的な資本主義から,新品の大量消費といった時代を経て,今,未来に向かって,持続可能な社会の実現のために自然環境との調和,リサイクル,シェアリング(共有)による資源の最適化が必要となっており,これらが一体となって21世紀の要請であることを,今一度我々は確認できるのではないかと思われるのである。

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